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独立や起業で失敗する人のパターン

結局は情報収集能力にかかっている

相手が何を望んでいるのかを知るためには、勘も重要だが、結局のところ、コツコツと情報収集をしているかどうかにかかってくる。ふだんから周囲や取引先に気を配っている人は相手の置かれた状況を理解しやすく、結果として相手のニーズを理解でき、交渉も有利に運ぶことができる。要するに情報収集能力がすべてを決めるのである。

情報収集でもっとも有効な手法は定点観測である。

かつて旧ソ連が健在だった東西冷静時代、ほとんど情報が出てこない共産圏の政情を分析するには、党機関紙の無味乾燥な文章や、雛壇に並ぶ要人の写真を丹念に比較分析するといった気の遠くなるような作業が必要だった。

事実を伝える事務的な文章であっても、内部の序列が変化すると、書き方が微妙に変わることがある。また、雛壇での立ち位置に変化が生じることもある。共産圏ウォッチャーの人は、こうしたごくわずかな変化から、内部の権力闘争の状況を推察していたのである。

この手法はビジネスの分野でも十分に応用が可能だ。

優れた経営者ならば、経験則的によく分かっていることだと思うが、商談が滞りがちになるときには、相手からの連絡が遅くなる傾向が見られる。もちろんそれだけですべてを判断することはできないが、商品に関する資料を要求される頻度が高くなった、会食を断られた、電話で不在ということが多くなったなど、他の情報を加えることで、精度はさらに向上してくる。

会社が倒産しそうな時にも、同様にいくつかの兆候が観察される。

社長がこれまで会っていなかった人とのアポイントを増やしている、会社のトイレが汚くなる、幹部社員が退職するといったことなのだが、これらの兆候は継続的にそして丁寧に相手の会社をチェックしていないと、なかなか見えてこない。

こうした地味で基礎的なことをしっかり継続できる人にこそ、成功の女神は微笑むことになる。

*この記事は2015年10月に掲載された物です

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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