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お金に対する誤った価値観から自由になる

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当たり前のことかもしれないが、富裕層になれる人は、お金儲けについて素直によいことだと思っている。これは意外と重要なポイントである。人間とは不思議な動物で、よくないと思っていることにはあまり身が入らないものである。お金持ちになれる人が、ビジネスや投資に邁進できるのは、それをポジティブに評価しているからである。

*この記事は2015年6月に掲載されたものです

世の中のためというのはホンネなのか?

日本ではお金儲けは卑しいものという認識があり、嫌悪感を持つ人が一定数存在する。このため、実際にお金儲けをした人の多くは、そのことをストレートに語らない。情報が出回らないので、ますますイメージだけが一人歩きし、お金に対する偏見が増幅していく。

以前、お金持ちに関して筆者に取材に来たあるジャーナリストは、「本当に立派なお金持ちの人ほど取材を受けてくれない」とこぼしていた。

だがこうしたイメージは多くの場合は真実ではない。ビジネスや投資の中には、確かにあまりスジのよくないものもあるが、全体的に見れば、むしろそれは少数派である。世の中では、大きな利益を上げたという話を聞くと、すぐに何か悪いことしているのではないかと考える人がいるが、それは、お金に関する偏った情報が作り出したイメージであることがほとんどだ。

筆者は、これまで多くのビジネスを見てきたが、犯罪や犯罪に近いグレーゾーンのビジネスというものは、実は効率が悪く、経済合理性が低いものが多い。むしろ社会の役に立つことをした人の方が、圧倒的に大きな利益を上げることに成功している。

ビジネスや投資で成功した人の多くが、自分が提供する商品やサービスが、本当に世の中のためになると信じており、それが結果的に経済的成功につながるというしくみである。

自分がしていることが世の中のためになると強く信じている人は、厳しい環境に置かれても考えがブレない。これはビジネスや投資で成功するための大切な要素といってよいだろう。

「クロネコヤマト」で有名なヤマト運輸の故小倉昌男会長は、強固な信念で事業を拡大し、巨万の富を得た代表的な人物のひとりである。

小倉氏が父親からヤマト運輸を引き継いだ当時、同社はまだ小さな会社であった。当時の運輸業界は、企業向けの大口配送サービスが中心で、家庭向けの宅配事業は、見向きもされなかった。ここにビジネスチャンスを見つけた小倉氏は宅配への進出を決めるのだが、社内からは「うまくいくわけがない」という反対の嵐であったという。

だが大きな荷物を気軽に送れるサービスがなく、多くの主婦が困っていると確信していた小倉氏は、反対の声を押し切って宅配サービスを続け、一兆円企業の基礎を築いた。

加谷珪一

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