お金持ちになれる人は、稼ぎ方も上手だが、使い方も上手だ。お金を稼ぐことと使うことは表裏一体なので、どちらかだけが上手でも大きな富にはならない。
お金の使い方が上手な人にはある特徴がある。それはお金を払った相手に対して、必要以上に期待しないというものである。お金を払う相手は個人とは限らない、モノやサービスもその対象となる。買い物として購入した商品でも、投資用の不動産でもそれは同じことである。
相手に対して怒らない実業家
相手への不満のほとんどは、相手が自分の期待したように動いてくれないことに端を発している。相手への期待は、行き過ぎると相手への依存につながってしまう。正しいお金の使い方ができる人になるためには、こうした相手への過度な期待から自由になることが重要である。
筆者のよく知る、初老を迎えたある実業家は、成功の秘訣として「決して相手に対して怒らないこと」であると述べている。ただ、彼が言うところの「怒らない」は、「怒る」という行為を一切しないという意味ではない。実際、彼が怒っているところを筆者は何回か見ている。
だが彼に言わせれば、怒ると決めてから怒っているのであって、感情のままに怒っているわけではないのだという。あくまで交渉のポーズとしての怒りである。彼によれば、怒りの感情というのは、ほとんどが相手に対する期待の裏返しである。相手に対する期待をゼロにすれば、怒りを完全にコントロールできるのだという。
彼は仕事を発注した取引先が仕事をきちんとこなさなくても怒らない。もちろんクレームは付けるのだが、改善しないようなら、あっさりと切ってしまう。これは顧客に対しても同じで、顧客から理不尽な要求が突きつけられても決して彼は怒らない。だが、その要求について度が過ぎていると判断したら、たとえ顧客といえでも、取引をやめてしまうのだ。
中には、怒られないときちんと行動しないという人もいる。彼が相手に対して怒っているのは、怒った方が、相手が誠実に対応するという場合だけである。
こうした対応は、モノや事業に対してもまったく同じである。