メンタルトレーナーの高畑好秀氏が、悩めるエンリッチにアドバイスする本コラム。意外な視点からの言葉に、思わずハッとさせられるかもしれません。今回は「報酬のバランス」について考えます。
ふたつの異なる報酬をイメージすると
モチベーションを保ちやすい
皆さんにとって、成功から得られる“報酬”とは何でしょうか? 「目標を達成した満足感」「従業員の笑顔」「社会貢献」「規模の拡大」、あるいは「収入」「高級レストランの食事」かもしれません。いずれにしろ、十人十色ということで、各人思い描く報酬のイメージがあることと思います。
日本のプロ野球チームで活躍後、大リーグでも多大な成果を収めた、ある元ピッチャーは、高校時代の苦しい練習を振り返り、次のようなエピソードを私に打ち明けてくれました。それは「練習中にダメだ、ツラいと思った時は、練習後に仲間たちと行く駄菓子屋で飲む炭酸水の味をイメージしていた」というもの。面白いことに、甲子園で活躍している自身の姿ではなかったのです。もちろん、甲子園出場のために毎日トレーニングを重ねているわけですが、それだけではモチベーションを保てないということでした。
ここからわかるのは、人には「精神的報酬」と「物欲的報酬」のふたつのインセンティブが必要だということです。この方の場合、甲子園出場は精神的報酬、炭酸水は物欲的な報酬を意味し、どちらかが欠けても苦しみには耐えられず、目標を叶えることはできなかったかもしれません。
そこで、皆さんも壁や困難に立ち向かう際は、自分のなかのこの2つの報酬を用意しておき、置かれた状況によってどちらかを強くイメージし、モチベーションを維持することをお勧めします。
例えば、いまこの瞬間が苦しいのであれば「クリアしたらビールで乾杯しよう」でもいいですし、自身の行動に迷いが生じたのであれば「これがうまくいけば上場に近付く」というように、メンタルと即物的な報酬を想像するのです。両者のバランスを心がけることで、何事にも耐えられる底力が身に付くようになります。また、異なる報酬を自分自身のなかに設定し考えることで、メンタル的なバランス感覚も磨かれるでしょう。