支配欲に流されないためには
「心の木」を描いてみる
トップからすると、これほど快感なことはありません。本当は周りから「裸の王様」と思われていても、表面上は皆が自分に逆らいませんから、自信や正当性も増長するばかり…。こういった状況が続くと、トップは「自分のイメージ通りに物事は進んでいる」と信じますから、もう変わることはありません。
ところが、これでビジネスなどがうまく運んでいれば良いのかもしれませんが、問題は壁にぶつかった時。いまさら、イエスマンたちは自分の本音を口にしませんし、ヘタをすると「従った結果がこれか…」とばかり、反対勢力を生みだすことにもなりかねません。状況が悪くなると泥船から逃げ出すごとく、組織からも人が流出する恐れもあります。
そう考えると、自立した人材を育てるためにもイエスマンは必要ありませんし、誰もが自分の意見を口にすることができる、風通しの良い場所を作ることがトップには求められます。自分自身が支配欲に負けない・流されないためにも、つねに「自分は間違っていないか」など自問自答を繰り返し、ブレない心を鍛える必要もあるはずです。私がメンタルトレーニングでよく用いるのは「心の木」を紙に描きだし、木が成長するために必要なことは何か、何をすれば成長せず腐ってしまうのか、ブレないで行動するためには木の中心=幹に何を据えればいいのか書き加えていく手法です。こうすることで、自分はどうあるべきかを可視化できるので、ぜひお勧めします。
一方、矛盾する話ですが、部下には一時的にイエスマンになることを求めるのも、人材育成のポイントだと思っています。あまりにも自由な気風だと、周りに合わせない、雰囲気を読まない、我儘な人材になってしまう危険があるからです。ガマンする時期も社会人には必要で、イエスマンというと極端ですが、トレーニングのタイミングでは「文句を言わずにやってみろ」という姿勢も、トップやリーダーには必要です。そうでないと、自己主張ばかりでガマンの効かない人物に育つかもしれません。ある程度、成長が見込めたら、ちゃんと理由を話したうえで、徐々に裁量を持たせていけばいいのです。
一流だけが知っている自分の限界を超える方法
KADOKAWA/中経出版 1,404円
名だたるトップアスリートが指名するメンタルトレーナーである著者が、彼らと真剣に向き合う中で見出した「人間は本来負けたがっている」というオリジナルのスポーツ心理学をベースに、「勝ち」への執着を捨て、限界突破のための「負け」を知る究極の方法を説く。
高畑好秀 公式サイト: www.takahata-mental.com