ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

プレッシャーとの向き合い方

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メンタルトレーナーの高畑好秀氏が、悩めるエンリッチにアドバイスする本コラム。意外な視点からの言葉に、思わずハッとさせられるかもしれません。今回のテーマは「プレッシャーとの向き合い方」です。

負けを自覚できないから
経営が無軌道になっていく

起業家や経営者、あるいはビジネスエリートの毎日といえば、プレッシャーとの戦いではないでしょうか。どれだけ好きなことをしていたとしても、交渉や納期、結果、売り上げ…常に何かに追われていて、それはプレッシャーとして襲い掛かり、さらにはストレスとしてたまり、心身を傷つけていきます。ネガティブな要素は日々のパフォーマンス低下を招きますから、可能な限り避ける生活を心がけたいものです。これまでも有効な手段として、頭を使えば身体も使うなど、心身のバランスを整える、仕事ばかりではなく趣味も楽しむといったことをアドバイスしてきました。

一方、普段からの気の持ちようで、プレッシャーに負けないメンタリティを保つこともできます。その最たるものが「負けを覚悟できるかどうか」、これに尽きると私は考えています。

数々のビジネスを成功させ、事業を拡大していくと、成功体験の積み重ねにより自信がわき、それはともすると「失敗を許容できない」自分や組織を作り上げます。ただし、そうなってしまうことで過度にミスを恐れて自由闊達に動くことができない、さらにはマンネリに陥る危険性も生じます。言い換えると、負けることが怖いから、人は緊張しますし、メンタルが弱くなってしまうのです。ベンチャー企業が大手にはできない面白いことをやってのけ、一気に注目を集めるのは、事業サイズが小さかったり、チャレンジャスピリットが勝り、ある程度の失敗を想定・許容しているからだと思います。ところが、成功のサイクルが回り始めることでそれを忘れてしまい、攻める立場から守る立場にポジションが変わってしまうのです。

近年は、日本を代表する企業で不適切な会計が発覚するなど、隠ぺいに伴う不祥事が目立ちます。「まさかあの会社が?」と思うのですが、これは経営陣や組織全体が、失敗を認められないことが、大きな要因になっていると思います。上場企業であれば業績の悪化に伴い株価の下落、投資家資本の流出、世間や業界の評価の低下など企業価値の棄損につながり、当然ながら人事にも響きますから、これを避けたいという気持ちを働かせるのでしょう。ところが、プレッシャーに逆らえず、嘘に噓を重ねた結果、どうなってしまったかとうと、目も当てられない惨状を招いただけ…。企業を支える従業員のロイヤリティも下がり、組織全体の求心力は急落、事業のバラウリなど、無軌道な経営は最悪な結末を引き起こしています。

高畑好秀

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