名経営者は哲学を持つ
人格者でもあった
テクニックはマネや応用がしやすく、誰もが実践しやすいことから、人気があることは確かです。うまくいけば、わずかな時間で、好印象を周りに与えることも不可能ではありません。
ところが、国内外を問わず、名経営者と呼ばれる人の多くは、人格者と評されることがほとんど。むしろ、テクニック論は述べません。人の土台となる哲学を磨き続けることでカリスマ性を発揮し、組織を正しい道へと導いてきました。
例えば、松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助氏。皆さんも抱くイメージは「切れ者」というよりは、崇高な人格者ではないでしょうか。「経営の神様」として国内外でその功績が語り継がれていて、数々の名言を後世に残しているのは周知の通りです。
ちなみに、日本で初めて週休二日制を導入したのは、松下電器産業でした。いまでは当たり前になっていますが、幸之助氏は、これまで6日でやっていたことを5日で済まないといけませんから、業務の効率性を訴えると同時に、十分な休養で心身の疲労を回復する一方で、文化生活を楽しむことも必要だと判断したそうです。
1965年に実施の際は「10分かかっていた電話は3分にしろ」と効率化を求めると同時に、1日はしっかりと休み、残りの1日は自分を高めるための時間にする「1日休養、1日教養」の指針を示しました。
当時は国内だけではなく、海外企業の日本市場参入、海外にも打って出るという時期で、グローバルに活躍するには効率性の向上とともに、休養だけではなく、教養も通じた人間磨きが必要不可欠だと考えたというわけです。週1日の休みが当然で、2日も休むなんて、とんでもない話だったのでしょうが、幸之助氏には強い信念や哲学があったからこそできたのではないでしょうか。加えて、勝ち残る会社になるためには、従業員の資質も上げないといけないと考えたのも、ポイントだと思います。結果、週休2日制は勤労意欲と生産性の向上という成果を生み、日本人の働き方革命のきっかけとなり、その後、官公庁や他企業も導入することになりました。
このように、自分自身のなかに芯となる考えがあれば、それを具体的な施策にも落とし込むことができます。もちろん、皆さんも日々、意識して、内面磨きに徹していることだと思いますが、より意識していただければ幸いです。
*この記事は2017年6月に掲載されたものです
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高畑好秀 公式サイト: www.takahata-mental.com