ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

定義してみると

土地持ちか実業家か?
 
では、現実に人数の多い富裕層とはどのような人たちだろうか。日本の場合には、やはり、土地をたくさん持っている資産家ということになるだろう。

日本は欧米諸国に比べると金融市場があまり発達しておらず、保有する資産の多くが土地に偏っているという特徴がある。このため日本におけるミリオネアの圧倒的多数が、こうした土地を引き継いだ資産家である。

困ったことに、彼等の多くは、皆がイメージするような富裕層的な生活を送っていない。それは彼等が、上品で慎ましやかで、節度を心得ているからではない。多くの土地所有者が大金を消費するだけのキャッシュを持っていないのである。

日本は土地の利用効率が悪く、土地の値段が高い割に、土地から大きな収益を上げることができない。土地を持っているといっても、都心の一等地ならともかく、そうでないところではアパート経営をするのが関の山であり、そこから得られる収益はたかが知れているのだ。

一方、土地にもガッチリ固定資産税はかかるので、少ない収益がさらに少なくなる。このため土地持ちの資産家は、保有する資産に比べて地味な暮らしをしている人が多い。

首都圏の近郊ではさらにその傾向が顕著になる。東京郊外にちょっとした家を持っている人であれば、戦後の土地の値上がりで資産額が1億円を突破していることも多い。だが現実の生活は一般的なサラリーマンであり、生活はごくごく庶民的である。だが彼等も帳簿上はミリオネアなのだ。

では、名実ともに富裕層に近い生活を送っている人はいないのだろうか?

もっとも近い立場にいるのが、安定的な企業を一族で所有している実業家である。彼等は都市部にも地方にも必ず一定数存在している。いわゆる地元の名士になっているのもこうした人たちだ。

サラリーマン経営者と違い、彼等は会社の経営者であると同時に、会社の株式を所有するオーナーでもある。このため、役員報酬に加えて、株式からの配当収入がある。また会社は自分のものなので、車や住宅も会社で所有することができる。

彼等は家業を守るという意識が強く、派手に散財はしないが、それなりの金額をしっかり消費している。一方、会社を通じて資産もそれなりに蓄積しているはずだ。

加谷珪一

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