ルールを覚えるのは重要だが、過度なウンチクは禁止
では具体的にフランス・ワインにはどのような枠組みが存在しているのだろうか。
フランスではワインのブランドは政府が管理している。ぶとう産地の畑ごとに、詳細なランク付けが行われており、ワインがある銘柄を名乗ろうとした場合には、指定された場所で取れたぶとうを使い、基準をクリアした醸造方法を用いる必要がある。これを満たさない場合には、特定の銘柄を名乗ることはできない。
ワインのラベルのことをエチケットと呼ぶが、エチケットの見方が分かれば、一見しただけでどの程度のワインであり、味がどのようなものかか即座に推測することができる。ワインに詳しい人は、エチケットから得られる標準的なイメージと実際に飲んだ時のギャップを楽しんでいるのだ。
最近では有名な作り手が、あえてこの基準を無視して美味しいワインを作り、基準外であるにもかかわらずプレミアムが付くというケースもあるが、これはあくまで例外である。著名な銘柄はすべて、同一基準で製造されており、飲んでいる人は、場合によっては100メートル単位の狭さで、どの畑で取れたブドウを使ったものなのか分かる。
畑の条件が同じということになると、今度は、いつ採れたぶどうなのかという部分が、味の違いとなって現われてくる。製造年のことをワインの世界ではヴィンテージと呼ぶが、ワイン好きの人が「何年モノのシャンベルタンがうまい」などと言っているのは、年によって味が微妙に変わってくるからだ。
ワインの試飲会などでは、垂直試飲といって、同じ銘柄について複数の製造年で飲み比べたり、水平試飲といって、同じ年に作られた同じ銘柄で、作り手が違うものを飲み比べるといったことがよく行われている。
味の表現も皆、テキトーに言っているように見えてそうではない。「なめし革」のよう「果実味がある」といった表現は、どういった味を指しているのか、実はコンセンサスが出来ている。これを無視した表現をしていると、ルールが分かっていないことがバレてしまうのだ。
ワインの世界を好まない人は、こうした排他的なルールを嫌悪しており、一方で、この世界に惹かれる人は、こうしたルールに魅力を感じている。
確かに、ここまで嫌らしいルールがあると少々辟易してしまうのは事実だが、こうした仕組みの存在が、高い付加価値を維持しているのも事実である。
もしワインについて興味があるなら、こうしたルールは覚えておいて決して損はない。わざわざ指摘するまでもないが、ルールを覚えたからといって、やたらとウンチクを並べるのは御法度である。ワインに限った話ではないが、常に余裕を持って行動することはお金持ちの鉄則である。
*この記事は2017年4月に掲載されたものです。
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