よい店を探して予約するコストは実は膨大
会食を成功させるためには、配置だけが問題ではない。店員さんのサーブの仕方がもたらす影響は極めて大きい。料理をサーブする際、簡単な説明をしてくれるケースはよくあるが、店員さんのレベルが際立つのはこうした場面である。あまり熟練していない店員さんが多いお店では、一律に料理の説明をするよう教育することしかできず、利用者の会話の状況を考えずに、話に割り込んでしまうというケースがよく見られる。
これは実際に経験している人ならよく分かると思うが、重要な話をしている時に会話を遮断されてしまうことの影響は極めて大きい。
筆者がよく通っていたお店の店員さんは、こうした微妙な対応が非常に上手だったが、それはオーナーの教育が完璧だったからである。以前、そのお店にあまりこうした高級店に行き慣れていない人を招待したことがあるが、食前酒のオーダーを取りに来た店員さんは、「何かお飲み物は?」というセリフに続けて、すかさず「ビールもありますし、シャンパンなどもございます」と続けた。
ちなみにそこは、食前酒にビールを出す類のお店ではないが、会話もほとんどしていない段階で、筆者のゲストの状況を素早く察知したのである。ゲストは「とりあえずのビール」を楽しみ、その後、いろいろなお酒をオーダーしていった。
席の配置が絶妙で、隣の距離が確保されており、しかも店員さんの動きは完璧というお店であれば、いくらお金を出しても惜しくないという富裕層は多い。ところが、こうしたお店を見つけ出すのはそう容易ではなく、仮に見つけることができたとしても、大事な日に確実に予約を入れられるとは限らない。そうなってくると、想定したビジネス・シナリオが崩れてしまうことになる。
つまり富裕層にとっては重要な相手との会食を望んだ日に設定できないことは、極めて大きなコストになって跳ね返ってくるのだ。そうであるならば、自分でお店を所有してしまった方が、場合によっては合理的ということになる。常に席を確保しておけば予約で苦労することはないし、店員さんも自分で教育するのだから、自分の思うとおりに動いてくれる。
ただ、テーブルの配置に余裕を持たせ、常に席を確保しておくということになると、当然、収支という点では苦しくなってくる。だが、ここをコストと割り切ることができ、お店を持たないコストをカバーしてくれるのであれば、お店を所有し続ける合理性が出てくる。
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