東京でリッチな人が住む自治体といえば、やはり港区が頭に浮かぶだろう。実際、統計上も港区の住民は高所得である。今回のお金持ち行動経済額は、港区と高額所得者の関係について取り上げてみたい。
港区の平均所得は突出している
総務省では、毎年、自治体ごとの所得と課税状況をとりまとめた「市町村税課税状況等の調(しらべ))」を公表している。それによると2016年において、住民1人当たりの課税対象所得がもっとも高かったのは東京都港区で1111万円だった。2位は千代田区の916万円、3位は渋谷区で772万円となっている。ちなみにリッチな街として有名な兵庫県芦屋市は5位だった。
もっとも平均所得が低かった自治体の所得は198万円なので、港区の住民とは5.6倍の格差がある。港区は、かつては芝区、麻布区、赤坂区の3つで構成されていたことからも分かるように、様々な街の複合体となっている。旧麻布区に該当する地域がもっとも港区らしいイメージを持っているが、この範囲に限定すれば、さらに所得が大きくなるかもしれない。
麻布には大使館も多く、賃貸マンションも外国人の利用を想定して100㎡以上などの広いスペースを持つところも多い。また他のエリアと異なり、タワマンではなく低層のマンションが多いのも特徴だ。確かに高級住宅地としての条件の多くを満たしている。
では、港区の住民はなぜこれほどリッチなのだろうか。もちろんビジネスで成功した人が、港区のブランド・イメージや高級マンションに魅力を感じて転居してくるので、お金持ちの人が集まっているからというのがその解答になる。では、彼らはどのようにして高い所得を得るに至ったのだろうか。その秘訣は統計結果にあらわれている。
ここで順位を付けた所得は課税所得といって、すべての所得を合算し税金の対象となった所得のことを指す。この中には給与所得だけでなく、株式投資から得られた所得や不動産投資などから得られた所得も含まれる。多くの人にとって、給与所得が稼ぎの大半を占めるので、給与所得においてどれだけの差があるのかについても見ておく必要があるだろう。
給与所得に限定した場合、港区は同じく全国1位だったが、状況はだいぶ変わってくる。もっとも大きいのは、1位と2位の金額差が大きく縮まっていることである。課税所得全体では、1位の港区と2位の千代田区の差は195万円だった。ところが両自治体の給与所得の差は114万円しかない。投資による所得を加えないと、港区と千代田区の差は大きく縮まってしまうのだ。
さらに興味深いのは3位の順番が入れ替わったことである。課税所得全体でのランキングで3位だった渋谷区が4位となり、代わりに3位に入ったのは何と北海道の猿払村である。なぜ北海道の先端、稚内の近くにある小さな村の所得が高いのかというと、それはホタテの養殖である。
猿払村はかつて北海道の中でも所得が低い自治体のひとつといわれてきたが、高級ホタテの養殖に成功してからは状況が一変した。豊漁の年には高額所得者が続出するといわれており、全国でも指折りの高所得自治体となっている。