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東京都港区の住民はどれほどリッチか?

リッチかどうかのカギを握るのは投資

2つの事柄を併せて考えると、港区の住民が高所得である理由が見えてくる。それは株式と不動産への投資である。全所得に占める投資収益の割合を比較すると、港区は19.6%と突出して高い、これに対して千代田区は14.9%、渋谷区は13.7%と似通っている。港区の住民は他の住民と比較して投資に対してかなり積極的であることが分かる。

港区の住人は、千代田区の住民よりも200万円ほど、渋谷区の住民より300万円ほど給与所得が多いが、これを消費税、株式や不動産に積極的に回していることになる。全国のランキングを見ても、高額所得な自治体になればなるほど、急カーブで投資による利益の比率が上昇してくる。最終的にリッチかどうかの決め手となるのは投資ということが分かる。

高額の収入がある人は、それを積極的に投資に回し、さらに所得を高めるというのは、一般的によく言われている資産形成のメカニズムである。このような形でより大きな資産を作っている人が、積極的に港区を選択していることから、港区の所得が突出して高いという現象を生み出している。

逆にいえば、株式への投資の割合が高い人は、実業家など比較的自由にライフスタイルを決められる人が多く、住む場所も積極的に選択できている可能性が高い。これに対して、渋谷区や千代田区はむかしからその土地に住んでいる地主など、積極的に移動せず、頻繁に土地なども売買しないタイプのリッチが多いのかもしれない。積極的に売買しなければ、定常的に得られる収入はそれほどの金額にはならないはずだ。

ちなみに2015年でも2014年の調査でも港区は1位だった。それ以前の調査でも同様だが、アベノミクス前のデータを見ると、港区と最下位の自治体との格差は4.9倍だった。一方、株価の上昇が最も顕著だった2014年には6.5倍とかなり拡大している。アベノミクス相場が港区民をリッチにしたことは明らかだ。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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