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The Style Concierge

お金に縁のない人は、謝ることができない

最近、「ご心配をおかけしましたことをお詫びします」といった口調を耳にすることが多くなっている。この言い回しは、事実上の謝罪として使われることが多いのだが、お金持ちから見ると、こうした言い回しは典型的な貧乏脳パターンに見えてくる。

謝罪しない最大の理由は高すぎるプライド

そもそも、謝罪の言い回しとして「心配をかけたこと」をお詫びするというのは、根本的に間違っている。相手はあなたのミスや不適切な言い方などに対して怒っているのであって、何かを心配しているわけではない。心配をかけたなどというのは、どちらかというと、立場が上の人が、下の人に対してかける言葉であって、謝罪などとはほど遠いものである。

同じような言い回しに「結果として不快な思いをさせてしまった」「ご迷惑をおかけしました」というものもある。いずれも謝罪になるどころか、場合によっては相手をさらに怒らせる可能性がある。

では、なぜこのような言い回しを人はしてしまうのだろうか。実際に口にしている人に理由を尋ねると、いろいろと理屈をこね回すだろうが、本当の理由はシンプルだ。自分自身に対するプライドが高く、人に対して謝りたくないからである。

筆者の実感では、世の中の人の7割程度が、自身に対して過剰なプライドを持っている。この高いプライドが邪魔して、どうしても人に謝ることができないのである。

簡単に謝ってしまうと、責任を認めたことになり不利になるという、もっともらしい理屈を言う人がいるが、これもほとんどが妄想と思ってよい。筆者はこれまで複数の事業オーナーとして、訴訟案件も含め、数多くトラブルに直面してきたが、自分自身に何らかの非がある場合には、素直に謝った方が圧倒的に物事はスムーズに進む。

人はそれほど性悪ではない。自身の非を認め本気で謝罪している人に対して、不当な要求をする人はそれほど多くない。ちなみに、筆者の経験では、そのようなことをしてきた相手は一人もいなかった。どれだけ怒っていても、本気で謝罪すれば、相手は理解するものである。

お金持ちは傲慢だというイメージを持っている人は多い。実際、そのような側面があるのは事実なのだが、一方でお金持ちは謙虚でもある。特に自身に非があって相手が怒っているの場合には、素直に謝ることができる人が多い。

謝ることができる能力は、ビジネスなどにおいて極めて有効に作用する。謝罪がきっかけで、かえって関係が深まり、強固なビジネスパートナーになったという事例は無数にある。プライドが高く謝罪ができない人は、こうしたビジネス・チャンスをみすみす失っているのだ。これではお金持ちからますます遠ざかったしまう。

加谷珪一

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