ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

電話をうまく使う

エンリッチ kaya1709

「電話してくる人とは仕事をしない」という堀江貴文氏の発言が世間を賑わしている。これは彼の著書「多動力」の一節なのだが、彼はなぜ電話はダメだと言っているのだろうか。(*この記事は2017年9月に掲載されたものです)ここにはお金持ちに関するヒントが満載であり、じっくり考えてみる価値がある。

道具にはそれぞれに特徴がある

ホリエモンは、電話というものは「自分の時間を奪う最たるもの」だとしており、電話で話す必要がない用事であるにもかかわらず電話を鳴らす人の電話には絶対に応答しない、と発言している。

彼らしいストレートな言い方なので、当然のことながら、この発言に対しては賛否両論となっているのだが、問題の本質は、電話に出る出ないの話ではない。ホリエモンは、利用する道具の特質とそれにふさわしい利用形態について指摘しているのだ。

電話とメール(もしくはメッセンジャー)は、相手とコミュニケーションを取る道具だが、その本質は根本的に異なっている。電話はコミュニケーションの当事者が同時に時間を確保しなければならない(同期通信)が、メールの場合その必要はない(非同期通信)。

道具というものは、本来、その道具が持っている本質的な特徴に最も似合う形で利用するのが望ましい。昭和の時代なら、リアルタイムでやり取りができる通信手段は電話くらいしかなかったので、電話が持つ道具としての特徴はほとんど顧みられることなく、常に電話が使われた。

だが、今の時代には電話だけでなく、メールもSNSなど様々な連絡手段がある。であるならば、それぞれのツールにふさわしい使い方をするのがもっとも効率が良く、社会全体の利益を最大化することになる。

こうした視点で物事を考えた時、電話にもっともふさわしい利用形態というのは、双方が同時に会話を進める必要がある場面ということになるだろう。アイデアをぶつけ合ったり、少し複雑な議論をする時、といった場面が考えられる。場合によっては、声を聞いて安心したいといったエモーショナルな理由もあるかもしれない。

逆に言えば、こうした状況に当てはまらない場合、双方、同時に時間を確保しなければならない電話は、逆に非効率になる。ホリエモンが電話してくるな、と言っているのは、電話そのものがダメだと言っているのではなく、電話でしなくてもよい話をわざわざ非効率な電話でやり取りしようとするな、と主張しているのだ。

加谷珪一

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