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初デートにサイゼリアはアリかナシか 
お金持ちならこう考える

ビジネスでも恋愛でもベキ論は避けた方がよい

「べき論」というのは、話の軸足が常に自分側にある。相手も同じ価値観であれば何の問題もないが、そうとは限らない。双方の価値観がよく分かっていないうちは、過度に「べき論」は持ち出さない方がよい。

オシャレなお店は気を遣うので行く必要はないというのは、本人の価値観であって相手の価値観とは限らない。行ってみれば意外と楽しいかもしれないし、逆に女性の側も先入観だけで判断してるだけかもしれない。実際にはカジュアルな店の方が好きだったということは十分にあり得るだろう。
 
だが、これらの話はすべて仲良くなってみれば分かることである。相手のことが分からないうちから、自身の価値観を中心に物事を進めていると、まとまる話もまとまらなくなる。

この話は営業活動にも応用できる。一見すると営業マンにぴったりなタイプの人でありながら、思いのほか注文が取れないというケースがある。注文が取れないのは、たいていの場合、自身の価値観が強すぎることが原因となっている。

いくら良い製品であっても、相手がいつでもそれを望むとは限らない。人がモノを購入する時には適切なタイミングというものが存在する。しかし「この商品を売りたい」という思いが強すぎると、相手の状況を考えずに、一方的に提案してしまい、結果として相手の心を開くことができない。

これに加えて、お金をかけたくないという思いが強いと、話はさらにやっかいになってくる。うまくいくかどうかも分からない初デートに多額のお金をかけることは、少し躊躇するかもしれない。だが、少しだけ奮発すれば、少なくともお店のチョイスで嫌われてしまうリスクを軽減することができる。

本当に相手のことが好きで失敗したくないと思っているなら、初デートに少しお金をかけることは、一種の投資であり保険ということになる。あまり大きな金額はどうかと思うが、ここをケチっているようなら、相手に対する気持ちについても少し疑ってかかるべきである。

お金をかけたくないという気持ちを正当化するために、カジュアルな店であるべきだという話になってしまうと、もはや軌道修正するのは困難である。

初デートではお金をかけるべきではない、カジュアルな店にすべきであると、強く思っているなら、本当のところその気持ちがどこから来ているのか、冷静に自己分析した方がよいだろう。主義を貫くのは、その後からでも決して遅くはない。
 

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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