このところ、世の中は「働き方改革」一色となっている。働き方改革というのは、労働生産を向上させることが目的であり、残業の短縮はその結果としてもたらされるものだが、残業時間の削減だけが自己目的化しているようにもみえる。
だがお金持ちの人たちからすると、働き方改革は「何を今さら」というテーマだろう。年収が高い人ほど労働時間が短いというのはお金持ちの世界では常識となっている。一方で、年収が高い人は、必要であれば、どんなハードワークでもこなす覚悟を持っている。要するにメリハリが効いているのだ。
年収が高くなってくると、労働時間が短くなる
以前、このコラムでも紹介したが、一般に年収が高い人ほど労働時間が短くなる傾向がある。
総務省の社会生活基本調査によると、週休2日と仮定した場合の1日あたりの労働時間は、年収250万円の人は約9.6時間だが、年収が400万円台の人は10.3時間となっている。ここまでは、年収と労働時間は比例しているのだが、さらに年収が上がってくると状況が変わる。
年収700万円台では10.0時間に、900万円台では9.8時間となり、さらに1500万円以上では9.4時間まで減少する。あまり大きな違いとはイメージできないかもしれないが、これは平均時間なので、現実には大きな差と考えてよいだろう。
年収が高い人は、管理業務的な仕事をしていることが多いので、労働時間が直接成果に関係していないというのが最大の理由と考えられる。また管理業務に従事していない場合でも、付加価値が高く、工夫次第で労働時間を短くできるということもあるだろう。
一般的に、企業経営者や専門職に従事している人は、自身の労働時間についてかなりの裁量がある。こうした人たちの中には、短時間で仕事を済ませる人も多いので、これが労働時間を短くしているのかもしれない。
こうした事実を見るだけでも、労働時間の問題は単純に時間ではなく、付加価値や生産性と密接に関係していることが分かる。付加価値の高い仕事を実現できれば、結果的に労働時間を減らすことができる。いきなり仕事の付加価値を上げることは難しいが、ムダな作業や無意味な作業を見直すだけでも、仕事全体の効率は劇的に向上するだろう。
こうした工夫とセットにしなければ、本当の意味で働き方改革を実現することは難しいはずだ。