「あの人には、お金儲けの才能がある」。ビジネスの世界ではよく聞くセリフである。筆者の周囲でも、お金儲けに突出した才能を持っていると解釈せざるを得ない人は一定数存在する。果たしてお金儲けの能力は、生まれ持った才能なのだろうか。それとも後天的に身に付くものなのだろうか。
運動神経や学校の勉強は親から引き継ぎやすいと言われるが・・・
人は親からどの程度、能力を引き継ぐことができるのかというのは多くの人にとって関心が高いテーマである。一方で、遺伝的な話が関係してくるなど、微妙な問題をはらむケースがあり、取扱いが難しいのも事実だ。欧米では、親からどのような能力が継承されやすいのかについて活発な研究が行われており、ある程度の結論が得られている。
人が持つ能力のうち、運動神経や学業成績などは遺伝する傾向が高いことが分かっている。つまりプロスポーツ選手など運動能力が高い人の子供は同じように高いスポーツ万能である確率が高く、運動音痴の親からは運動音痴の子供が生まれやすいということになる。学校の勉強も同じで、成績が優秀だった人の子供はやはりテストの点数が高いという傾向が見られるという。
この結果は、ある程度、納得できる話ではないだろうか。いま話題の貴乃花親方を見れば、運動能力を親から引き継ぎやすいことは明白といってよいだろう。また学者の子供が成績優秀というケースは多かったはずだ。
だが親から何でも才能が引き継げるわけではない。運動能力や学業については遺伝的要素が強いのだが、開拓性、外向性、勤勉性など、各種の性格は遺伝的要素が低いことが分かっている。こうした要素は親の能力に関係なく、どのような環境で育ったのかでかなりの部分が決まってくる。
お金儲けには様々な手段があるが、基本的にはビジネスと投資ということになるだろう。つまりビジネスや投資が上手な人はお金持ちになりやすいわけだが、この2つについては学業成績よりも、開拓性や勤勉性といったマインドがモノを言うのは明らかである。
もちろん、まったく勉強ができないということでは、覚えなければいけないものも覚えられないので、いろいろと大変かもしれないが、学業成績とビジネスの成果が直接リンクしないことは、多くの人が認識している。会社の中を見渡してみれば、優秀な成績で一流大学を卒業したものの、仕事ができないという人が一定数存在するものだが、これも当然の結果かもしれない。
お金持ちになるための能力は遺伝ではなく、その後の環境によって身に付くというであれば、才能があると思っていた人たちも、実は本人の努力や周囲の環境によって、こうした能力を身につけたのかもしれない。