ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

お金を持っていない人を一発で見抜くことができる

接する時間が短いと得られる情報も少なくなってしまう

ビジネスや投資におけるリアリティというのも、違いが目に付きやすい部分である。お金がない人が、稼いでいるフリをしている話にはどこかリアリティに欠けることが多い。

以前、テレビ・コメンテーターとして活躍していたショーンK氏の経歴がウソだったことが明らかとなるという出来事があった。

彼は、ハーバード・ビジネス・スクールでのMBA(経営学修士)取得など、華々しい経歴をウリにしていたが、実際には学位は取得していなかった。また、ビジネスについても、ニューヨークに本拠を置く経営コンサルティング会社のトップとして、グローバルに活躍していると説明していたが、これも虚偽であった。

実際に事業に取り組んだことがある人なら分かると思うが、会社のオペレーションをしながら、テレビやラジオで何本ものレギュラー番組を持つことは、時間的な制約上、ほぼ不可能である。

彼が長期にわたって、うまく周囲を騙すことができたのは、タレントという職業上、他人との関わり方を最小限に済ませることが可能だったからである。

人材コンサルタントの城繁幸氏は、ラジオ番組に呼ばれ、彼と話をしたことがあったそうだが、城氏は「なんか怪しい」とは思ったそうだが、100%見抜くことはできなかったそうである。

城氏はエリート・ビジネスマンとしての経歴を持っており、コンサルタントという人種がどのような人たちなのか、その「ニオイ」も含めてよく知っていたはずだ。それでも短時間ですべてを見抜くのはやはり難しかったようだ。

堂々とプロフィールにウソの経歴を書かれてしまうと、面と向かってそれに疑問を呈する人はほとんどいない。しかもショーンK氏はテレビなどで活躍しているので、まさかウソの経歴であるとは多くの人が考えなかっただろう。

こうした事例は、間接的に示された情報は、私たちの印象に大きく影響するという現実をよく表している。しかも、その間接的な情報が、あたかも客観性が高いように見えるものだった場合、その効果は倍増することになる。

本コラムの読者の方ならすでに実践済みかと思うが、相手の本質を見抜くためには、第一印象のみに頼らず、多方面から、じっくり検証するという作業が必要となる。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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