お金持ちの人は1000万円を稼ぐと、おおよそ30万円の稼ぎとカウントする。1000万稼いだのに、30万円にしかならないというのはどういう意味だろうか。
ストックが生み出したフローだけが消費してよいお金
お金に色はないと言われているが、実際はそうともいえない。同じ100万円でも、消費してよい100万円と消費してはいけない100万円の違いというのは明確に存在する。
まとまった資産がない時には、人は毎年の稼ぎ(つまりフロー)の中から消費するしかない。しかし、一定以上の資産を持った人にとって、毎年の稼ぎ(フロー)というものは、原則、消費してはいけないお金である。
働いて得たフローというのは、基本的にストックを作るための原資であり、本来は手をつけるべきお金ではない。ではお金持ちにとって消費してよいお金はどのようなお金なのだろうか。それは、フローの結果、ストックが蓄積され、ストックを運用した結果として生み出されたフローだけが消費してよいお金ということになる。
つまり、稼いだお金が蓄積され、それが再び富を生み出す段階になって、初めて、消費の対象となるわけだ。
さらに厳密にいえば、ストックの運用で生み出されたフローから税金を差し引いて残ったお金が真の意味で消費可能なお金と定義した方がよいだろう。この段階まで到達して、ようやく、躊躇せず、すべてを消費に回すことができる。
こうした状態を維持することができれば、自身の資産は減ることはなく、運用で生み出された資金の範囲内であれば、いくらでも散財してよい。ここまで達成できて、ようやく真の意味での資産家になることができる。
もちろん、運用資金だけで十分な消費ができるほどの金融資産ということになると相当な金額だが、そこまでいかないまでも、この考え方を基本に行動するのは大事なことである。
それなりの資産や年収のあるリッチ層の人が、一気に転落してしまうケースが希にあるが、たいていは、この法則から大きく外れたお金の使い方をしていることが原因である。
資産額が大きくなると、自身の年収に占める運用収益の割合が徐々に上がってくる。運用収益が働いて得られる年収を超えれば、理屈的には労働の必要はなくなるが、現実に仕事をやめるという人は少ないはずだ。ここで、労働による年収に運用収益が加わったフローを消費に回してしまうようでは、それ以上の資産形成は難しい。
当初は、運用で得た資金はすべて再投資に回し、ストックの量を増やすことを心がけた方がよい。10年くらいの期間が過ぎれば、ストックの額は思った以上に大きくなっているはずだ。