ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

成功した資産家と引きこもりの若者の共通点

周辺領域に位置していることの意味

実際に事業を始めれば、一般社会では到底考えられないレベルの負荷(精神的、肉体的、経済的)が起業家にのしかかってくる。どんなに能力があったとしても、1人の人間が受け入れることができる水準には限界がある。大きな成功を収めた人は、1回か2回は、自分ではどうしようもないレベルの重圧で、押しつぶされそうになった経験を持っているはずだ。

こうした状況に陥った時、選択できる手段は限られている。開き直ってしまうか、完全に逃走するのかのどちらかである。筆者も1度だけ、事業が危機的な状況となり、肉体的にも精神的にも限界に近づいた経験がある。

自分が危険な状態にあると気付いたのは、ほとんど不眠で働いていたにもかかわらず、ある時から、急に眠くなくなったことである。「これはかなりマズイ状態になっている」と察した筆者は、一切のアポイントをキャンセルし、1週間、ホテルで眠り倒した。周囲にはかなり迷惑をかけたかもしれないが、これをしていなければ、筆者は今頃、この世にいなかったかもしれない。

うつになった人に、ガンバレと励ましたり、趣味やスポーツで気を紛らわせばよい、とアドバイスするのは、適切ではないとされる。

尋常ではない重圧に押しつぶされようとしている起業家と、うつ状態になりかかっている若者は、立場はまったく異なるが、置かれている状況は似ていて、対処すべき方法もやはり似ている。

両者における最大の共通点は、一般社会から見れば周辺領域に位置しているということだろう。

周辺領域にいるからこそ見えてくるものがあり、それが時に、大きな成功を導くカギとなる。平均的な行為からは平均的な結果しか生まれてこない。引きこもりがちで苦しんでいる人は、その経験をうまく活かすことで、新しいチャンスをつかめる可能性があるかもしれない。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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