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持つべき資産には順番がある

1億円が見えてきたら価値観の転換を

ケネディ元大統領の娘で、前駐日大使だったキャロライン・ケネディ氏はケネディ家から莫大な資産を相続したが、大使就任前に規定に基づき資産内容(概要)を公開している(米国政治の透明性は高く、一介の公務員に過ぎない大使でも資産公開が求められる)。

それによると、保有する資産の多くは、公社債になっており、年数%で手堅く運用していることが分かる。不動産も所有していたが、これは自身の居住や別荘として保有しているもので、運用のための資産ではないと考えられる。 

ケネディ氏は生まれながらの資産家なので、おそらく資産管理のアドバイザーが付いており、当初から似たようなポートフォリオだったと考えられる。資産総額は300億円から500億円と推定されるが、300億円が社債や国債で4%で回っているとすると年収は12億円ということになる。この範囲であれば、ケネディ氏はどれだけ散財しても、資産の元本がなくなることはない。

日本で300億円の金融資産を持っている人は希だろうが、10億円というレベルならそれなりの数になる。10億円の資産を3〜4%で回せば、年収は3000万円〜4000万円となるので、いわゆる高額所得者になることができて、しかも自身の資産が減ることはない。

資産が1億円を超えてきたら、安全資産中心のポートフォリオ構築を目指して、徐々に資産内容をシフトしていくのがよいだろう。

資産が1億円を超えてくると、債券や株式などの金融資産以外の資産、つまり金などについても選択の余地がでてくる。金は持っているだけでは収益を生まず、保管にコストがかかる資産である。したがって、資産額が大きくないうちは金を保有するメリットはほとんどゼロといってよい。

だが、資産額が一定以上になると、リスクヘッジ手段としての金の魅力は一気に高まることになる。

定常状態においては、金融資産が持つ流動性に勝るものはない。だが、金融危機など非常事態が発生した時には、金融資産は流動性が消滅することが十分にあり得る。こうした時には金を保有していることはリスクヘッジの手段となるはずだ。

以前も本コラムで解説したことがあったが、資産家が高級時計を購入する目的には、資産の分散という意味合いがある。

誰もが知っているブランドの時計であれば、換金に応じる店も多く、流動性は高くなる。だが、こうした資産はあくまで代替資産であり、資産額が小さい段階からは、それほど積極的に投資する必要はないだろう。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

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