空間をうまく使える人は成功する前から実践できている
成功する人は、経済的にはそれほど豊かではない時から、必要であればタクシーを使ったり、それなりのお店で食事をするという経験を積んでいることが多い。それは、多少コストがかかっても、静かな空間を確保することの重要性を強く認識しているからである。
彼等は時間の使い方も工夫している。
同じ1時間でも、カフェなど、ざわついている空間で15分の細切れ時間が4回あるのと、静かなオフィスで1時間のまとまった時間があるのとでは、その時間が持つ価値は根本的に変わってくる。まとまった時間が1時間あれば、吟味して提案書を作成することもできるし、より長期的な視点に立った調べ物なども可能となる。
できるだけまとまった時間が取れるよう日々工夫した人と、漫然と毎日の時間を過ごした人とでは将来的に大きな差がつくのは当然の結果といってよいだろう。
日本は先進諸外国と比較して街の騒音が激しいといわれる。成長途上の国が騒々しいのは当たり前だが、駅での大音量のアナウンスなど、先進国としては日本の環境は特殊といってよいかもしれない。このところ日本の経済力の低下が叫ばれているが、実は街の騒音というのも、こうした経済環境と無関係ではない可能性がある。
本来であれば成熟国家として、高い付加価値や生産性を実現する必要があるにもかかわらず、従来型の業務から脱却できていない組織や人は多い。日本では働き方改革が国民的テーマとなっているが、日本の生産性は諸外国と比較して半分から3分の2程度しかない。もし日本の生産性が本来、あるべき水準まで上昇しているのなら、日本社会はもう少し静かになっていたのかもしれない。
本コラムの読者の中には組織のリーダーとして、多くの人を指導する立場になっている人も多いはずだ。良好な業務環境を構築するためのスキルについて、これから成功する人たちに教えるのも、成功者が持つ社会的責任のひとつである。
どうすれば良好な仕事環境を構築できるのか、どうすればまとまった時間を確保して、付加価値の高い仕事に転換できるのか、分かりやすい形で体系化し、多くの後進に伝えて欲しい。こうした実績が積み重なれば、日本の組織全体の付加価値もかなり向上するのではないだろうか。
*この記事は2018年12月に掲載されたものです
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