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The Style Concierge

過剰なプライドと自己愛がある人は成功できない

顧客とのトラブルは実は最大のチャンス

この担当者は、自分では意識していないが、自身に対するプライドが異様に高い。とにかく自分に非があるということを認めることができないのである。一言、「こちらのミスです。申し訳ありませんでした」と言えば済むところを、頑なにそれを言わないので、最終的には大きなトラブルにまで発展してしまう。

このような対応しかできない人というのは、実は少数派ではない。会社を経営してきた筆者の経験上、こうした性格の持ち主は少なく見積もっても、半分くらいはいる。

合理的に考えた場合、自身の側に非があるにもかかわらず、絶対に謝らないというのは何のメリットもない。非を認めると裁判などで不利になるので認めるべきではないといった意見も耳にするが、こうした意見を言う人は、ほぼ100%、裁判で争った経験を持っていないはずだ。

争点にもよるが、その場で謝ったかどうかといった話が訴訟に影響するケースはほとんどないといってよい。諸外国では、非を認めて謝罪するという習慣はないという話が流布しているが、これも単なるイメージである。欧米のビジネスマンの中にも、自分に非があれば「Sorry」という人はそれなりにいる。

結局のところ、謝らない人というのは、ほとんどの場合、自己愛が過剰であり、自身のプライドを守るために頭を下げないだけである。

本コラムの読者の方であればよく分かっていると思うが、ビジネス上の相手と、もっとも親密になれるチャンスは実はトラブルの時である。自分のミスで相手が激怒したものの、その後の対応が功を奏して、逆に大きな取引につながったという話は枚挙にいとまがない。

つまり自分のミスや相手の怒りは、成功をつかむきっかけでもあるのだ。

半数の人が、こうしたチャンスを自らドブに捨てているのだとするとそれはもったいないことである。同時に、成功を目指す人にとっては、これほど嬉しいことはない。世の中の半分の人が、自ら競争を放棄してくれているのだから、自身が成功できる確率は一気に上昇することになる。

*この記事は2019年7月に掲載されたものです

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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