最後に残った不確実性こそがリスク
筆者は、ビジネスや投資で成功するにあたって自信を持つことは百害あって一利無しだと考えている。新しいビジネスに取り組むにあたって、自信がなければ、事前の調査や類似事例の検証を徹底するはずであり、こうした作業を繰り返していけば、たいていのリスク要因は排除できる。
だが、どれだけ事前に調査や検証を行っても取り除けない不確実性というものが残る。これこそが本当のリスクであり、これは不確実生そのものなので、どんな天才でもその先を予測することはできない。このリスクを取るか取らないかは、リスクに対する価値観であって、自信とは何の関係もない。
成功しているビジネスマンや投資家というのは、たいていこのようなプロセスを経て意思決定を行っている。徹底的に調べて、考えて、最後に残ったリスクを取るのが本当の決断である。こうしたプロセスを経ずに、「これはイケる」と直感に頼って投資やビジネスを進めるのは、ただの自信過剰でしかなく、1〜2回は成功できても、継続して成功するのは難しい。
著名な実業家に話を聞くと、新しい事業をスタートする時には、100通りのプランを考えるといった話がよく出てくるものだが、これは頭の中で無数の失敗を繰り返すことと同じである。100通りのプランについてあらゆる方向から検討し、最後に残ったプランでも、まだ不確実性が残る。
だが、ここまで取捨選択すれば、あとはやるかやらないかだけであり、この部分について、あれこれ頭を悩ましても意味がない。結果として、成功者は、自信満々で意思決定しているように見えるだけであり、それは自信ではなく、まさに確信ということになる。
*この記事は2020年1月に掲載されたものです
加谷珪一 著
日本はもはや「後進国」
秀和システム
単行本 1,430円
日本の世界競争力ランキングの順位は63カ国中30位(IMD調べ)、平均賃金はOECD加盟35カ国中19位、相対的貧困率は39カ国中29位、教育に対する公的支出のGDP比率は43カ国中40位(いずれもOECD調べ)など、データを参照すると、先進国というイメージと異なる日本の現実がみえてくる。日本の豊かさのカギを握るものは何なのか? 著者がわかりやすく解説する一冊。
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