お金で幸福は買えないという、当たり前過ぎる事実
一方、最初から人生の選択肢を狭めている人は、資産額の大小にかかわらず、息苦しく、閉塞感に包まれた生活を送らざるを得ない。このような人の場合、何かの偶然である程度の年収を得たとしても、状況が大きく変わるわけではない。
実は、日本人は諸外国の人と比べて、お金で幸福が買えると考える人の割合が高いという調査結果がある。日本人はお金に関する話題を忌避する傾向が強いが、これはウラを返せば、金銭というものに対して過剰な執着があることを意味している。
先ほどから説明しているように、経済的に豊かであることは、人生の選択肢を広げる効果があるが、選択肢を持つという行為そのものは、経済的要因で決まるものではなく、本人の精神が決め手となる。お金で幸福を買えると考える割合が高いということは、自ら選択肢を広げようと考える人の割合が少ないということでもあり、これでは仮にお金を持ったとしても幸せな生活は送れない。
これは多くの人にとって不幸なことといってよいだろう。
一連の状況を総合的に考えると、お金持ちになっても幸せにはなれないという話はかなり真実に近い。逆に言えば、お金がなくてもそれなりに幸福感を感じることができ、かつ、自らの選択肢を自身で切り拓くことができる人は、最初から人生の満足度が高く、結果的に経済的に豊かになる確率も高い。
この話は勝つ馬は最初から決まっているという話にも聞こえるが、そうではない。
自身を勝つ馬にするのか、勝てない馬にするのかを決めるのは自分自身であって、他人や社会ではない。人生の早い段階でこの価値観を身につけることが出来た人は、そうでない人と比べて圧倒的に有利な立場で人生を送ることができる。すべては、自身の気持ち次第である。
*この記事は2020年3月に掲載されたものです
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