未来は予見できないが、予兆を知ることはできる
加えて言うと、成功者は状況を事前に察知する能力にも長けている。これは第六感という意味ではなく、情報収集や分析といったリテラシーのことを指している。
今回、コロナ危機が発生することについて、事前に予測することは不可能だったはずである。予言者は存在しないので、これは当たり前のことだが、時期こそ明示しないものの、近いうちにこうした感染爆発が起こる可能性が高いと考えていた人は一定数存在しており、こうした人たちは今回の危機にもスムーズに対処できている。
実は、2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が発生した際、多くの専門家が、近い将来、もっと大規模な感染爆発が発生すると予想しており、2009年に新型インフルエンザが流行した時にも、やはり大規模な感染爆発に対する警告が発せられた。
近年、日本では季節性インフルエンザによる死者が増加しているという統計もあり、感染症に対する警戒が必要との声は着実に大きくなっていた。リスク管理についてしっかり情報収集していた人であれば、感染症の危険性は認識していたはずであり、当然のことながら、事前の準備も行っていたと考えられる。
実際、筆者がよく知る企業経営者は、2003年のSARS流行をきっかけに、マスクや消毒液などの備蓄を行っており、今回のコロナショックにおいて、マスク不足に悩まされることは一切なかった。到来する危機に100%対処することはできないが、事前の準備によって、その被害を小さくすることは十分に可能である。日頃から地道な努力を積み重ねられる人は、仮に今回のような危機が発生しても、被害を最小限に食い止められるのだ。
加谷珪一 著
日本はもはや「後進国」
秀和システム
単行本 1,430円
日本の世界競争力ランキングの順位は63カ国中30位(IMD調べ)、平均賃金はOECD加盟35カ国中19位、相対的貧困率は39カ国中29位、教育に対する公的支出のGDP比率は43カ国中40位(いずれもOECD調べ)など、データを参照すると、先進国というイメージと異なる日本の現実がみえてくる。日本の豊かさのカギを握るものは何なのか? 著者がわかりやすく解説する一冊。
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