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成功者の中に広範囲なコロナ検査を望む声が多い理由

成功する起業家にとって、今何が起きているのか、徹底的に情報分析を行った上で戦略を立案するという思考パターンは、当たり前過ぎるほどに日常生活に組み込まれている。二人にとって、今、何人感染者がいるのか分からないという状態で感染症と闘うなど、到底、考えられなかったに違いない。その結果として、全員が検査できる態勢を構築するというプランにつながった。

だが世間一般の反応はまったく逆で、広範囲な検査は医療崩壊を起こすので実施すべきではないという声が大きかったが、この違いはどこから生じるのだろうか。

現実には様々な問題があるので、安易に広範囲な検査を実施することには多くの実害があるだろう。陽性になった人が大挙して病院に押しかけるという事態が発生することも容易に想像できるし、日常的に一般消費者を相手にビジネスをしている孫氏や三木谷氏は、こうした事情について人一倍、よく理解しているはずだ。

だが検査を実施することと、病院が患者を受け入れることはロジカルには別問題であり、韓国がそうだったように、広範囲に検査を行っても、病院が重症者しか受け入れないと毅然とした対応を取れば医療崩壊は発生しない。

経営戦略の分野や自然科学(サイエンス)の分野においては、まず対象をしっかり観察して正確なデータを取ることは、すべてに優先する事柄であり、両氏はその原則にしたがった過ぎない。まずは情報収集(つまり検査)が重要であり、同時に医療崩壊を防ぐ策を講じればよいと考えたはずだ。実際、孫氏はその後、PCR検査ではなく抗体検査キットの提供を表明している。

「事態を把握するために広範囲な検査が必要だが、それによって病院に人が殺到するかもしれないので、実際の検査は抑制した方がよい」という話と「広範囲な検査を行うと医療崩壊するので検査は行うべきではない」という話は、検査をしないという点では同じだが、その本質的な意味はまるで異なっている。

加谷珪一

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