孫氏と三木谷氏はカンが鈍ったのではない
筆者はむやみな検査拡大を推奨する立場ではないが、明らかに論理的な正解は前者であり、検査の抑制はあくまでも現実問題を考慮した結果として判断すべきものだろう。だが世論はそうではなく、孫氏や三木谷氏に対しては「医療を崩壊させる気か」といった激しい批判が寄せられた。
(広範囲なセルフ検査は実施しないという)同じ結論を得る場合でも、両者の違いは極めて大きいと筆者は考えている。成功者というのは、まずはロジックにしたがって必要なプランを考え、現実を考慮して最終的な判断を行う。今回の件で言えば「本来、検査の拡大は必要だが、現実には弊害が多いのでやめた方がよい」という結論になる。
一方、ロジックを飛ばしてしまう人は、検査拡大と医療崩壊という本来は別の次元のテーマを混同してしまい、最初にダメだという結論を出してしまう。たまたま結論が同じだったので今回は問題なかったが、こうした思考パターンは時に致命的なミスを引き起こす。
多くの人の頭の中に「政府がやっていることは間違いない」といったバイアスがかかりやすいということも影響しているだろう。孫氏や三木谷氏にはこうしたバイアスがないので、ロジックに沿って考えを進めることができ、これが彼等の成功を支えてきた。
今回は両者とも結果的に撤回に追い込まれたが、ロジックに忠実な彼等の思考プロセスは多いに参考になると筆者は考えている。非常時においてもブレることなくこうした思考ができるのであれば、いかなる時でも原理原則に従った判断が下せるということであり、これは成功者にとって不可欠の要素である。
一部の人は、孫氏や三木谷氏のカンが鈍ったと批判しているが、そうではない。ロジックに従い、現実を考慮して撤回したという今回のプロセスは、二人がいまだに高い戦闘能力を持った起業家であることを物語っている。
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