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税金に敏感な理由

税金は商品の売れスジすら左右する

こうした税制の特徴は自動車の販売にも影響してくる。

高額の給料を個人で受け取り、所得税を払った残りのお金でクルマを買うよりも、法人の経費で処理した方が有利になる。だが、税務署は高級スポーツカーを必要経費として認めるわけがない。結果としてベンツなど確実に業務に使えるクルマに乗る人が増える。

加えて言うと、減価償却の関係から、中古の方が税制上、有利になるので、中古のベンツに乗る人も多い。どんな車種が売れるのかという話も実は税制と密接に関係しており、お金持ちの人は常にこうした戦略を考えている。

お金持ちになるためには投資も重要だが、投資に関する税制は所得に関する税制とは大きく異なっている。加えて、投資対象となる資産を個人で所有するのか、法人で所有するのかによっても状況は変わってくる。さらに言えば、時代が変わると、法人と個人の課税、所得に関する課税と投資に関する課税も制度が変更になる。

時代がどのように推移し、政府が税制をどのように変えようとしているのかというのも、お金持ちにとっては極めて重要な情報である。

経済的に成功している人は、若いうちからこうした仕組みについて勉強しているので、世の中の流れについて、大きく間違うことがない。結果としてビジネスや投資でも成功する確率が高くなる。お金持ちの人は、お金がそれほどないうちから税金に敏感なのは、こうした理由からである。

*この記事は2020年9月に掲載されたものです

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

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国際競争力の低下と少子高齢化が進む日本の未来とは?

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