空の旅の楽しみの一つは機内食だと言われる。特にビジネスクラスやファーストクラスでは、それなりに豪華なメニューが揃っているが、食事をしている乗客は意外と少ない。今年はコロナ危機が発生し、多くの航空会社が減便に追い込まれたことから、プライベートジェットで移動するビジネスパーソンも増えている。プライベートジェットの場合、オプションで食事のサービスが付けられることが多いが、この利用率もかなり少ないと言われる。
基本的に機内食は美味しくない
飛行機など移動中に食事をしない成功者が多いのは、身も蓋もない理由ではあるが、食事があまり美味しくないからである。客船など十分な厨房施設がある移動手段ならともかく、飛行機の場合、機内で調理することはできない。調理済みの料理を加熱するだけなので、どうしても味には限界が出てくる。
客船も毎日、新鮮な野菜や魚介類を仕入れるというわけにはいかないので、地上のレストランと比較するやはり物足りなさが残ってしまう。
ビジネスクラス以上であれば、空港でラウンジが使える。米系エアラインの場合、ラウンジにたくさんの食事が並んでいることは少ないが、アジア系のエアラインでは、ラウンジに厨房があり、その場で調理してくれるところも多い。当たり前のことだが、新鮮な食材を厨房設備で調理するので、機内食と比較すると、味は圧倒的にラウンジの方がよい(加工食品を加熱しただけの料理もあるが、こちらは機内食と大差がなくなる)。何か食べるなら、ラウンジで食べた方が楽しい時間を過ごせるはずだ。
だが、ラウンジで多くの人が食事をしているのかというとそうでもない。結局のところ、豪華な食事が提供されるはずのビジネスクラスやファーストクラス、あるいはプライベートジェットの乗客はあまり食べていないというのが現実なのだ。
その理由のひとつは忙しさだろう。
特にビジネスクラスの場合、仕事で利用する人が圧倒的に多いので、ギリギリのタイミングで搭乗手続きを済ませて飛行機に乗り込む人も多い。米国では年々、プライベートジェットを利用する企業幹部が増えているが、最大の理由は時間である。
直行便で行ければ大きな問題にはならないが、どこかの場所を経由する便だと、到着までの総時間はかなり長くなる。米国の場合、路線によってはファーストクラスとそう大差ない料金でプライベートジェットを利用できるので、この方が圧倒的に時間を有効活用できる。
ここ10年はLCCの普及で、海外旅行は便利で割安になったが、逆に不便な面も目立つようになっている。
各社は運行効率を最大限まで引き上げるため、ギリギリの運用を行っている。かつてはアジア各都市から日本への便は、単独での運行も多かったが、乗り継ぎ用途として利用されるケースも増えており、前の便のどれかが遅延すると、日本向けの便も出発も遅れるといった連鎖反応が発生しやすい。機内サービスの低下も著しく、飛行機での移動時間は苦痛以外の何者でもないという人が増えているのだ。
またビジネスでの利用であれば、現地に到着してから会食が待っていることも多いだろうし、食事で失敗して体調を崩せばその後のビジネスにも影響する。
機内が快適ではなく、食事も美味しくなく、そして現地での会食や体調管理という状況が重なると、移動中には積極的に食事はしない方がよいと考える人も多くなる。