新型コロナウイルスは依然として猛威を振るっており、完全終息する兆しは見えていない。だがマネーやビジネスの世界では水面下で着々とポスト・コロナ社会に向けた変革が進んでいる。数年後、コロナが完全終息した時には、お金持ちのルールも、今とはまったく違ったものになっているだろう。
お金というのは人と人との関係を媒介するものなので、いつの時代においても経済的に成功できる人は、コミュニケーション能力に優れている。ここで言うところのコミュニケーション能力というのは、直接、会って人と関係性を築くということだけを意味しているわけではない。自分が企画する商品を通じて、消費者とうまくコミュニケーションできれば、仮に直接的なやり取りが下手であっても、大きな成果につなげることができる。
セブン−イレブンを立ち上げ、コンビニの神様と言われた、セブン&アイ・ホールディングス元会長の鈴木敏文氏は対人コミュニケーションがあまり得意ではなく、部下が指示を100%理解できないこともあったといわれる。ところが鈴木氏の商品開発のセンスは天才的で、鈴木氏が考案する新商品は次々とヒット商品となり、セブン−イレブンの基盤を作っていった。つまり鈴木氏は、コンビニで販売するという商品を経由することで、消費者と卓越したコミュニケーション能力を発揮したということになる。
多くの人が薄々感じていると思うが、ポストコロナ社会においては、コミュニケーションのあり方が劇的に変わる可能性が高い。コロナ危機によって多くの企業がテレワークにシフトし、顔を合わせてのやり取りを行う頻度がかなり減った。2020年や2021年に新入社員として組織に入った人たちにとっては、直接、顔を合わせないのが標準となっており、これは今後の組織運営において極めて大きな影響をもたらすだろう。
それだけではない。巣ごもり消費が増えるなど消費者の購買パターンが変化しており、従来型のマスマーケティングはますます効果を発揮しにくくなっている。企業は業績悪化も手伝って、広告宣伝のあり方を再考するようになっており、顧客とのコミュニケーションについても抜本的に変わろうとしている。
このところ多くの著名芸能人が事務所から独立しているが、これも水面下ではつながっている出来事と思った方がよい。直接的にはコロナによるギャラ低下などが理由と考えられるが、ユーチューブなど新しいチャネルが登場し、自力でファンを開拓できる可能性が見えてきたことも大きいはずだ。
一連の状況を総合的に考えると、ポストコロナ社会におけるお金持ちの実像も大きく変わってくると予想される。