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ポストコロナ時代のお金持ちとは?

冒頭でも述べたように経済活動というのは人と人のつながりなので、ここをうまく仲介できる人がお金持ちになりやすいというのはいつの時代でも同じである。しかし、ポストコロナ社会においては、対面ではなくバーチャルな形で人とつながることが得意な人の方が有利になる可能性が高い。

何か新しいプロジェクトを始める際、リーダーとなる人が人を集める努力をするのは同じだが、従来は、直接会ってプロジェクトの意義を相手に伝え、賛同してもらうというスキルが大事だった。ところが、ポストコロナ社会では、SNSなどを通じてどれだけ呼びかける力があるのかでスタッフの動員力は大きく変わってくるだろう。

直接、人に会わない場合、相手の心に訴えかけるポイントは変わってくる。ITは日々進歩しており、最近はクラブハウスのように声で人を媒介するアプリも出てきているが、ZOOMであれ、ツイッターであれ、クラブハウスであれ、直接、対面する方法と比較すると、様々な面で違いが生じる。

直接会うことを前提にしたコミュ力は必ずしも100%効果を発揮しないので、もし非対面でのスキルが乏しいと感じている人は意識してそのテクニックを磨いた方がよいだろう。

ビジネスのアイデアも同じである。これまでは直接的な人と人とのつながりでビジネスが出来上がっていくケースも多かったが、今後は仮想空間での人間関係の重要性がより高まってくる。家から一歩も外に出ることなく、大きなビジネスを立ち上げる実業家も増えてくるだろうし、組織の形態もより柔軟になってくると考えられる。

ビジネスのインフラが完全にITにシフトすれば、いよいよ住む場所にこだわる必要もなくなるだろう。これまでも生活コストが安い海外に移住して、日本向けにネットでビジネスをする人が一定数存在していた。今はコロナ危機で移動もままならないが、完全終息後に移動が自由になれば、海外を拠点にする人はさらに増加するだろう。

これまで遠隔ビジネスの最大の障壁となっていたのは、ミーティングや営業だが、ZOOMの普及によって、そのカベも完全に取り払われた。決済などのインフラはすでに整っているので、完全非対面の事業も十分に現実的な段階に入ってきた。

バーチャルなビジネスをする予定がない人であっても、ネットという非対面空間で他人から信頼を得るスキルは身につけておいた方がよい。会ってもいない相手から高い信頼を獲得するスキルというのは、10年後にはもはや常識となっているかもしれない。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

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加谷珪一 著
 
「日本は小国になるが、それは絶望ではない」
KADOKAWA
単行本 1,430円
 
国際競争力の低下と少子高齢化が進む日本の未来とは?

将来の日本は小国になると予想し、小国になることは日本再生のチャンスであると唱える気鋭の経済評論家が、戦後最大の転換期を迎えた日本の新しい国家像を紐解く一冊。


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