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おとなしい人がお金持ちになれない本当の理由

kaya202105

日本では「大人しいこと」は良いことだとされている。大人しいという言葉には「静かだ」という意味もあるが、どちらかというと「上に逆らったりしない」「周囲の空気を読む」というニュアンスが強い。従順であることに「大人」という文字をあてていることからも、従属を求める社会風潮をうかがわせる。

しかしながら、ただ従順なだけではお金持ちなることなど到底、不可能である。人は意味もなく大人しくしているわけではなく、そこには明確な損得勘定が働いている。そして困った事に、大人しくしている人が求める利益は、大抵の場合、短期的かつ小額であり、これが大きな富を遠ざけている。

ポジティブな利益とネガティブな利益

日本社会において多くの人が大人しくしているのは、他人からのバッシングを避けるためである。出る杭は打たれるということわざがあることからもわかるように、他人と違う行動をする人は、日本では格好の攻撃対象となる。では、なぜ他人と違う行動を取る人に対して日本人は執拗に攻撃するのだろうか。

背景にあるのは、経済的な損得勘定と考えられる。しかも、その損得勘定は高い利益を求めるというプラスの発想ではなくネガティブなものである。

投資やビジネスでは当たり前のことだが、人と同じ行動を取っていては超過利益を得ることはできない。人と違う行動をするからこそ、大きなチャンスが巡ってくる。ビジネスや投資で成功した人は、ほぼ例外なく、他人とは違う行動を取っているという現実があるならば、成功するためには、独自の考え方や行動が必要だという結論にならざるを得ない。

本コラムの読者の方は成功者が多いはずなので、「人と同じことをやっていては経済的利益を得ることはできない」という感覚について直感的に理解できるはずだ。

ここで言うところの利益というのはプラスの利益であり、成功者や成功を目指してチャレンジしている人にとって、プラスでなければ利益とは言えないというのは当然の感覚だと思う。だが、世の中には、そう考えない人が意外と多いのだ。

ではプラスではない利益とは何かというと、自分より利益を上げる人がいなければ相対的にはマイナスではないというネガティブな利益である。

ある集団の目の前にビジネスチャンスが転がってきた時、誰も行動を起こさなければ、全員が利益を得ることはできないが、相対的には誰も損をしていない。多くの日本人が求めている利益とは、まさにこうしたネガティブな利益であり、それを実現するため、他人の足を引っ張ったり、出る杭を打っている。

誰かがそのチャンスに飛び付くと、その人だけが経済的に豊かになってしまう(かもしれない)。こうした事態を防ぐために全員が全員に対して、従順で大人しくしていることを求め、少しでも抜け駆けしようとする動きが見られると、執拗に攻撃してそれを防ごうとする。

加谷珪一

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