コロナ危機からの脱却が見通せない中、高級タワーマンションの販売が好調に推移している。どういうわけか、タワマンは世間の関心が異様に高く、「お金持ちはタワマンでこんな生活を送っている」といった記事を目にしたかと思えば、今度は「本物のお金持ちはタワマンなど買わない」「タワマンは廃墟になる」といった記事が出てくる。
こうした、いわゆるお金持ち系の記事というのは、主な読者であるお金を持っていない層の願望を元に作成されるので、事実であるとは限らない。タマワンの記事がこれだけ世の中に溢れているということは、多くの人が、タワマンに憧れており、お金持ちと結び付けて考えているからだろう。
では現実問題としてタワマンはどの程度、売れており、どのような人が買っているのだろうか。
不動産経済研究所によると、2021年4月時点における首都圏のマンション販売価格は何と平均7764万円に達している。2011の平均販売価格は4500万円台、2020年の価格は6000万円と、ここ10年、価格は一貫して上昇が続いている。それにしても平均価格が7000万円台というのは異様な水準だが、平均価格をここまで引き上げているのは言うまでもなくタマワンの存在である。20階以上の超高層物件の販売件数は前年同月比で約3倍となっており、タワマンが飛ぶように売れている状況だ。
投機目的がほとんどで実際にマンションには明かりが灯っていないとか、中国人投資家が買い漁っているといった話をよく見聞きするが、タワマンを購入している人の多くは、自己居住目的である。しかも、全体の割合からすると、いわゆるお金持ちの比率はそれほど高くなく、どちらかというと一般的なサラリーマン層が多い(タワマンは戸数が多いので、様々な価格帯の部屋がある)。
確かにタマワンの最上階や100平方メートル以上の部屋など、超高額物件を購入するのは、ほとんどがお金持ちである。中には投資目的でこうした物件を買う人もいるし、実際、筆者の知人の中にも最上階を購入した人(富裕層)がいるが、購入者の多くはいわゆるサラリーマン層である。
サラリーマンの給料では、平均価格7000万円の物件などとても手が出ないはずだが、ここにはカラクリがある。例えば、夫婦共に上場企業の社員で、親からかなりの額を援助してもらえ、かつ35年のローンを組むことができれば、6000万円や7000万円の物件も何とか買えないことはない。逆に言えば、こうしたサラリーマン層が、必死になって購入しているというのがタマワン購入層の現実である。
もう少し正確に言えば、すでにお金があり、場所や景色などが気に入って購入を検討する富裕層とこうしたサラリーマン層がミックスされているといってよい。
では、なぜ、多くの人たちが必死になってタワマンを買っているのかというと、首都圏では物件不足が深刻になっており、良い条件のマンションを買うことがますます難しくなっているからである。