経済的に成功する人とそうでない人の違いはどこにあるのだろうか。多くの人は能力の違いや運の違いと考えているかもしれない。だが、パターンが決まっている学校の勉強とは異なり、ビジネスや投資というのは総合力が求められるので、単純な能力差で物事が決まるほど単純ではない。
運が良い人がいるのは事実であり、中には明らかに幸運だったことで成功を手にした人もいるが、一方で、運は引き寄せるものだと主張する人もいる。あまり行き過ぎると自己啓発セミナーのようなノリになってしまうのでやめておくが、運は引き寄せるものという価値観はある程度までなら正しい。もし運が完全に偶然なら、多くの人に同じ確率で幸運はやってくるはずだが、現実問題として成功者は幸運に恵まれている印象が強いからだ。
結局のところ、成功者は単純な能力や運だけでなく、特別な何かを持っているという話だが、そのひとつがミッション(使命感)である。
経済的に成功するためには、成功したいという強い意志を持つことが大事だが、不思議なことに、ただ成功したい、お金持ちになりたい、というだけでは不十分だ。成功者というのは、個人的に成功したいということよりも、事業や投資を通じて自分が理想とする何かを実現するという、強烈なミッションを持っているのだ。
以前、ある外国人起業家が、なぜ、リスクを顧みずに起業にチャレンジするのかと聞かれ、「起業家というのは登山家やアーティストと同じものであり、なぜ?と聞くのはナンセンスだ」と答えていた。
登山家が山を登る理由として、「そこに山があるから」と説明するのはお決まりだが、ただ山があれば登るわけではないだろう。山を登る、つまり山を征服することには、損得を超えた超えた使命感のようなものがあると推察される。アーティストも、多くはお金のために作品を作っているのではなく、何かに突き動かされて作品を生み出しているに違いない。
それと同じように起業家というのも、事業を通じて何かを実現するという使命感に駆られて行動ケースが多く、その意味では単純にお金儲けだけが目的ではない。
実際、巨万の富を築いた成功者で、純粋に経済的な動機だけでビジネスや投資をした人は驚くほど少ない。露骨にお金のためだったとは言いにくいということはあるかもしれないが、それでも彼等の発言をよく聞いていると、お金よりもミッションの影響が大きいことが、言葉の端々から伝わってくる。
お金を稼ぎたいという純粋な欲求を持つことは大事だが、なぜ、単純な金銭欲よりもミッションの方が成功のカギを握るのだろうか。その理由は、ミッションを持った方が、結果的に得られるものが大きいからである。