このところ原油価格をはじめとする資源価格やビットコイン価格が急騰するなど、全世界的にインフレ懸念が高まっている。インフレになると現金の価値が大きく毀損するので、お金持ちにとってインフレは気になる事態だ。一方で、積極的に資産を運用するお金持ちにとっては、自らの資産を拡大するチャンスでもある。
インフレというのは継続的に物価が上がる現象のことを指す。インフレは財政政策や金融政策でマネーが過剰に市場に供給される場合や、需要に生産が追い付かず、製品やサービスの価格が上がることなどによってもたらされる。
このところ原油価格が高騰しており、それにつられて多くの資源価格の上昇が続いている。原油価格は1年前は1バレル=40ドル台だったが、すでに80ドルを突破しており、市場の一部からは100ドル突破の声も聞こえてくる状況だ。原油価格が上がると、石油に関連するモノやサービスの値段も上がるので、経済全体の物価を押し上げる。
これは物価上昇がもたらすインフレということになるが、一方で世界各国はリーマンショック以降、大胆な金融政策を行っているので市場には多くのマネーが供給されている。金融面でもインフレが起こりやすい状況に、物価高が加わっていることから、インフレが加速している状況だ。
インフレが進むということは物価が上がるということなので、同じ金額で買えるモノやサービスの量が減ってしまう。つまり、インフレが進むとモノやサービスの価値は上がるが、通貨の価値は下がると言い換えることができる。したがってインフレが進んでいる時に現金を持つことは御法度である。
モノの値段が上がれば上がるほど、現金の価値は下がっていく。日本は終戦直後、物価が180倍に高騰するというハイパーインフレを経験しているが、この時、資産の多くを現預金で持っていた人は、ほとんどの財産を失ってしまった。では、すべての富裕層が資産を失ったのかというとそうではない。インフレが発生した時に資産を防衛する方法があり、これを実践した富裕層は引き続き資産を維持することに成功した。
繰り返しになるが、インフレが進んだ時には、現金やそれに類するものは価値が下がるので継続所有は御法度である。債権も金利が付くだけで同じ金額が償還されるので、償還時に物価が上がっていた場合には大きな損失となる。インフレに対抗するためには、現金や債権を手放し、モノの値段と一緒に価格が上がっていく商品に乗り換えることが重要となる。
モノの値段と同じペースで価値が上がっていく投資対象には、外貨(インフレが自国のみだった場合に限る)、株式、金、不動産などがある。
インフレを回避する手段としてもっとも手っ取り早いのは外貨である。終戦直後は為替が自由化されていなかったので、多くの日本人は外貨を入手できなかったが、第一次大戦後に発生したドイツのハイパーインフレでは、フランなどの外貨に替えて資産を守った人は多い。南米のベネズエラやアルゼンチン、ロシアでもかなりのインフレになっているが、富裕層の多くはドルを保有しているし、市場ではドルの流通ルートも出来上がっている。