ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

良いモノを長く使わない

高いモノを身につければ良いという話ではない

もう1人の知人B氏は、相当な高収入ではあるが、多忙を極めており、服を選ぶ時間も惜しいという状況だった。しかし、服装は第一印象に大きく影響するので、やはり身なりについては相当、気を遣っている。

彼はいつも、行きつけのショップにおおよその希望を伝え、ジャケットやシャツ、パンツなどオシャレに見えるコーディネートを数セット、シーズンごとに注文していた。サイズも伝えてあるので、試着もせず、家に商品が到着するまでどんな色なのかも分からない。

だが彼に言わせれば、下手に自身でコーディネートするよりもショップに任せてしまった方が安全であり、かつ時間をかけずによい身なりができるので便利だという。買っていた服はそれほど高価なものではなかったが、基本的に1シーズンで着倒すので、使用期間は短い。

彼の場合も、やはり消耗品を上手に使い倒している。彼は自力でキャリアアップしてお金持ちになった人なので、若い時にはお金がなかったが、お金がない時でも服装には気を遣っており、当時はさらに安い服を1シーズンで着倒していたそうである。

このように成功者の多くが、服装について何らかの哲学を持っている。服装についてまったく無頓着という成功者もいるが(技術系の起業家など)、これはむしろ例外だろう。ビジネスなどで成功するためには第一印象が重要であり、そのためには服装には相応の配慮が必要なのである。

一方で、必ずしも高価なモノを身につけていればよいというものではない。自身に状況に合わせて、もっとも効率的なやり方で服装にお金をかけるという合理性が大事である。この話は本コラムでも何回か取り上げた消費と投資の違いというテーマにもつながってくる。

成功者にとって支出というのは、できるだけ投資に近くなければいけない。消費というのは、一時期の効用を満たすだけの支出であり、将来の収益にはつながらない。一方で投資は、今、投じたお金が収益になる可能性を秘めた支出である。

経済的に成功するためには、消費をできる限り減らして投資を増やすことが重要であり、それはファッションにもあてはまる。単純に高価なモノを身につけるのではなく、もっともパフォーマンスが高いモノを身につけることによって、お金持ちマインドが形成されるのだ。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

連載コラム

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