名門ローカル校の卒業生には、官職以外ではやはり金融都市シンガポールということで両親にも金融関係者が多いこともあり、投資銀行やファンドなどの金融関係の職種が人気となっているようです。ただ、シンガポール人がグローバルの金融シーンで活躍する上でネックとなってくるのは徴兵制です。
シンガポールの国籍を保有する男子は全員、17歳で入隊のチェックを受け、合格した人はその後2年間兵役にいかなければなりません。シンガポールの永住権を保有する外国人も、永住権を取得した1代目は兵役が免除されているものの、その息子は兵役が課せられています。2年間の兵役だけではなく、その後13年間は毎年1度招集に応じてキャンプで1ヵ月ほどのトレーニングを受けなければなりません。
徴兵制があるため、高等教育を修了するのも就職してからの昇進も女性の方が全般的に早く、シンガポールは世界でも有数の女性の社会進出が進んだ国となっています。日本ではいまだに金融業界で働いている人はシニアを中心に男性が多いですが、シンガポールでビジネスをしていると女性がいないミーティングはほとんどありません。
妻は、日本と比較してシンガポールの方が働きやすいと喜んでいますが、シンガポールの男性は仕事をする上で徴兵制とその後のトレーニングが大きな負担となります。ただでさえ激務である投資銀行やファンドにおいても、30代前半まで毎年1ヵ月はトレーニングで費やす必要があるため、その期間は土日を返上して働く人も珍しくありません。
このように、シンガポール人は幼少期から学力により受けられる教育内容が変わってくる苛烈な競争主義にさらされ、男性は高等教育を受けているタイミングや就職後も、兵役やトレーニングにより大きな負担があります。初代首相リー・クワンユーの最大限の効率性を求め高い資質を持つ人に持てるリソースを集中する一方、国家としての団結性を高めるため公共サービスには身分や職種の区別なく国民全員が参加するという哲学が反映されています。
シンガポール人のキャリアから、エネルギーはもちろん食料や水すら自給できない都市国家が、持てる力を最大限に導入して世界有数の豊かさを実現していることが垣間見えます。