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シンガポールの生活コストについて

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シンガポールの生活コストについて

ここまで、シンガポールの生活について紹介してきましたが、今回は費用面に焦点をあてたいと思います。日本でも報道され始めているのでご存じの方も多いかもしれませんが、シンガポールの生活費は高騰し続けています。

毎年、英国の経済誌「エコノミスト」が世界中の130以上の都市の生活費を調査していますが、今年のランキングではシンガポールが世界一になりました。この調査は、食品・交通・公益事業・アルコール・タバコ・教育費・メイドなどの消費財やサービスの価格を比較しており、ニューヨークの物価水準を100として算出されます。シンガポールのスコアは130で、2位のパリ、3位のオスロを抑えて、世界で最もコストのかかる都市に選ばれてしまいました。ちなみに、円安もあって東京のスコアは昨年が下がって118で、ジュネーブやメルボルンと並んで6位となっています。

ただ、全ての生活費が一様に高いわけではありません。この連載でも紹介したように、住み込みのメイドさんを雇っても政府に払う費用も含めて月5~7万円程度と東京より大幅に安いですし、同じく公共交通機関も地下鉄の初乗りが50円以下だったり、タクシーも東京の半分程度だったりと、割安に感じるモノもいくつかあります。

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一方、食費やアルコール・タバコなどは東京と比較してとても高く感じます。アルコール類は関税が高いため日本の3倍ほどしますし、タバコは政府が認証して印が入ったものしかシンガポールでは吸うことができず、認証されていないものを吸っていると高額の罰金が科されます。

ちなみに、タバコは持ち込みも厳しく制限されており、封を開けていない海外の煙草を持ち込んだ場合、初回は500SGD(約4万3,000円)の罰金で、2回目以降の違反をするとどんどん罰金額が上がっていきます。日本食が充実しているため私たちもよく利用しますが、同等のクオリティのレストランが平均して東京の2~3倍します。

また、住居費もとても高いです。シンガポールではローカルの人はHDBと呼ばれる公団住宅に住むことができますが、外国人は民間の住宅を所有するか、賃貸する必要があります。以前にも書きましたが、シンガポールには世界中から富裕層が流入してきているため、高額物件を中心にリーマンショック後大きく価格が高騰しました。不動産価格の高騰はインフレを引き起こし、ローカルからの外国人移民に対する反発が大きくなりかねないので、現在では印紙税が物件価格の18%(3%+外国人加算15%)にまで引き上げられています。

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オーチャードなど中心部のコンドミニアムですと、200~250㎡の高級な物件で8~10億円もしますが、このような物件を購入する際には印紙税だけで2億円近くかかってしまいます。2億円も出せば、KLやバンコクの近隣都市では最高級の不動産物件が購入でき、投資効率もいいため弊

社のお客様のほとんどはシンガポールに移住する場合に住宅を賃貸しています。賃貸価格も安くはないですが、シンガポールでは分譲価格がより吊り上がっており、中心部では利回りが2%を切ってきているので法外な金額とはなっていません。

もちろん、富裕層が多いシンガポールですから、先日も日本から移住する起業家の方向けにオーチャード中心部の超高級コンドミニアムを探しましたが、月額家賃200万円ほどする4ベッドルームはすべて埋まっており、仕方なく3ベッドルームに月額150万円ほどで住んでいただくことになりました。

そして、シンガポールで最も高いのが自動車です。国土が東京23区ほどの面積しかなく、自動車が増えると渋滞が深刻になるため、自動車の保有は厳しく制限されています。

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自動車を10年間保有する権利が800万円ほどかかり、さらに関税も100%以上と非常に高いため、日本で100万円ほどの大衆車を所有するのに1,000万円近くかかってしまいます。上記のようにシンガポールでは公共交通機関が安く、国土のすみずみまでいきわたっているため、居住している外国人の多くは自動車を保有していません。

インターナショナルスクールも、外国人移住者が多いため売り手市場で、学費は10~15%ずつ毎年引き上げられています。2年前に娘をシンガポールのアメリカンスクールに通わせ始めた時は、東京のインターよりも2-3割安いと思いましたが、今では円安もありシンガポールの方が高くなってしまいました。

税率が低く、規制も少ないためビジネスに適したシンガポールですが、だからこそ世界中からビジネスパーソンや富裕層が押し寄せ生活費が高くなっています。単なる移住先としてはコストが割高になるので、いかにシンガポールで稼ぐ体制を構築できるかが大切になってきています。

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岡村 聡 (おかむら さとし)

シンガポールで資産運用のアドバイスを行う株式会社S&S investments代表取締役。 マッキンゼー&カンパニー、アドバンテッジ・パートナーズなどを経て、2010年11月に妻と2人で同社を設立。現在、資産運用に加えて、海外移住や海外不動産投資などのコンサルティングも行っている。著書に「世界の超富裕層だけがやっているお金の習慣」(KADOKAWA/中経出版)など。

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