ショッピングの面でも香港はシンガポールより優れているようです。私はあまり関心がないため気づきませんでしたが、ショッピングモールを歩いているとディスプレイされている商品がシンガポールより香港の方がより高級だと妻が話しています。また、センスを感じるセレクトショップもシンガポールより香港の方が多いようです。
また、美術品や宝飾品のオークションでも、香港はシンガポールを規模ではるかに上回っています。特に、アジアに関する美術品や、高級ワインのオークションでは、香港はニューヨーク・ロンドンを抑えて世界一の規模になっているようです。
このようにさまざまな点で競合している香港とシンガポールですが、このライバル関係がシンガポールとマレーシアの関係にも影響しています。シンガポールとクアラルンプール間の高速鉄道、シンガポールとジョホール州間の地下鉄計画については、以前のコラムでも紹介しました。シンガポールとマレーシア双方の不動産価値に影響を与える重要なプロジェクトですが、シンガポール政府がマレーシア政府と経済面で協調するようになったことにも、香港の影響があります。
香港からは、中国本土の深圳市まで鉄道により数十分で移動でき、経済的にも非常に緊密に連携しています。香港の人口は約800万人で、深圳市を加えると2,000万人を超えます。一方、シンガポールの人口は約550万人で、マレーシアの最南端ジョホール州を加えても1,000万人弱です。ジョホール州ではイスカンダル計画という、総額10兆円以上を投じる超巨大開発計画が進行していますが、シンガポールの政府・民間も積極的に投資しています。シンガポール単体で、経済規模で香港と競合していくには限界があるので、ジョホール州ひいてはマレーシア全体を巻き込んで経済圏として伍していこうとしているのです。
アジアのグローバル都市国家というと、ドバイを思い浮かべる人もいるでしょう。確かに、ドバイもシンガポールと同じく域内の富裕層や企業の本社を集めていますが、インドの真ん中を境として、インドの西岸から以西の人や企業はドバイを、逆にインドの真ん中より東の人や企業はシンガポールを見ていることが多く、あまり競合していません。政府系ファンドがお互いに投資をしたり、教育関連を中心として人材が交流したりと、共存関係が確立されているように見えます。
一方、東京をはじめとして日本の諸都市は、グローバルでの都市間の争いから完全に遅れています。硬直的な規制や税制が議論にのぼることも多いですが、英語での教育環境やメイドサービスの利用しやすさなど生活面での遅れも目立ちます。東京はグローバル金融都市として、グローバル企業のアジア本社など、海外からヒト・モノ・カネを集めようとしていますが、よほど変革を加速していかなければシンガポールや香港との格差はますます広がるでしょう。