ここまで2回にわたって香港について紹介してきましたが(1回から読む)、最終回は香港のライフスタイルについて紹介します。まず、香港最大の富豪である李嘉誠(リ・カシン)はどのような生活を送っているのでしょうか。前回に香港の不動産について紹介しましたが、李氏は香港島南部のディープウォーターベイを見下ろすShouson Hill Roadに居を構えています。
前回のコラムで、香港の富裕層に人気の住宅エリアとしてヴィクトリアピークとランタウ島のディスカバリーベイを紹介しましたが、このディープウォーターベイを見下ろす香港島最南部も高級住宅エリアです。これら3つのエリアに共通していることは香港を悩ませている大気汚染が比較的にましであることです。高級住宅エリアの位置からも香港の課題が透けて見えます。
前回のコラムで香港の不動産価格は高騰し、数百平米のコンドミニアムが数十億円することを紹介しましたが、香港最大の富豪である李氏の住居は約4,200㎡と桁外れの大きさです。売却されることはないでしょうが、もし売りに出されれば数百億円の価格でしょう。総大理石のまさに白亜の大豪邸と呼ぶにふさわしい住居ですが、香港らしいのはデザインや内装が風水に基づいていることです。
香港の高層ビルには不思議な形をしているものも多いですが、これらも風水に基づいてそのようなデザインとなっていることがほとんどです。李氏も風水には強いこだわりがあり、お気に入りの風水師に自宅をデザインするときも監修させたようです。シンガポールも華人が80%の国で、一部のビルには風水の考え方が反映されているようですが、香港と比較するとその影響はとても限定的です。華人が中心のアジアの主要都市として一見共通点が多い香港とシンガポールですが、不動産を視察しているときも風水の影響など細かな点で差異が多くあって興味深いです。
李氏は自身が所有する長江集団中心という63階建てのオフィスビルの最上階に自分の事務所を構えています。もちろん、実際に目にしたことはないですが、事務所には李氏専用のプールと庭が併設されているという豪華な作りです。またこのビルのエレベーターには李氏が利用するときだけの特別なモードがあって、李氏がエレベーターに乗っているときは他のフロアに一切とまらず地上と最上階をノンストップで行き来するようになっているようです。このビルには世界的な企業が数多くオフィスを構えていてそこで働く人たちは李氏がエレベーターを使っているときは普段より長く待たされることになりますが、自身が所有する会社が時価総額で見て香港株式市場全体の約15%を占めていて、「香港の超人」というあだ名を持つ李氏だけに許される振る舞いかもしれません。
李氏はビリオネアの必須アイテムともいえるプライベートジェットやスーパーヨットも所有しています。李氏のプライベートジェットはガルフストリーム社のG550という機種で約60億円します。G550は李氏と最近、中国最大の富豪の座を争っている中国本土の不動産王である王健林氏や、アリババの創業者であるジャック・マー氏も同型機を所有していて、中国のビリオネアの代名詞と言える機体です。ガルフストリーム社はG650という、G550をさらに上回る約80億円する最上位機種も発表しているので、中国のビリオネアたちは数年後こぞってG650を所有しているかもしれません。
もちろん、李氏はこうした贅沢な生活を送るだけでなく、多額の私財を寄付しています。中国はもちろん世界中の教育施設や医療施設に寄付する目的で、約20億ドル(約2,400億円)という巨額の資金を持つ李嘉誠財団を設立しています。