ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

香港 3/3 
香港富裕層のライフスタイル

香港とシンガポールを行き来する中で感じるのは、子供を育てる環境としてはシンガポールの方が優れていることです。街中に緑があふれ、子供たちが遊べる公園やテーマパークも豊富にあるシンガポールの方が子育てに魅力的であることは私の周囲の30-40代の子育て世代の日本人富裕層たちも口をそろえています。

一方、レストランや文化的施設など大人が楽しむ施設はシンガポールより香港の方が充実していると感じます。先日もお客様と同行する中で、香港屈指のフレンチレストランと中華レストランにご一緒させてもらいました。もちろん、中国人を中心として世界から富裕層が集まる都市ですから、値段は張りますが、シンガポールのファインダイニングよりも高いレベルにあると感じました。

富裕層が集積してきた期間がシンガポールより長く、厳選された食材が世界中から集まるサプライチェーンが整備されていることが、こうした外食シーンのレベルの高さにつながっているようです。タイミングよく秋の始まりに香港の3つ星フレンチに行ったときは、フランスから初物の白トリュフが直送されていて、素晴らしい風味を楽しめました。フランス本国以外では香港に最初に配送されたとレストランのスタッフが話していました。

香港

ワインについても、香港は世界屈指のレベルにあります。特に毎年10月に開催される大手オークションハウス「サザビーズ」による香港でのワインオークションは、落札額で世界一となっています。ワイン好きが高じて、欧米の一流ワイナリーを所有する中国人富豪も増えていて、約7,000軒のシャトーがあるとされるボルドーでは既に100軒以上を中国人が所有しているようです。新規に売買されるボルドーのシャトーの約3軒に1軒が中国人により買われています。ワインがようやくブームとなりつつあるシンガポールとは雲泥の差です。

美術品についても香港の方がシンガポールよりはるかに大きなマーケットとなっています。以前から中国人富裕層に人気であった中国の明王朝や清王朝の頃に生み出された古美術品に加えて、最近では現代美術においても中国人アーティストで世界的な評価を得る人が増えてきており、中国関連の美術品のオークションは香港が世界最大のマーケットなっています。こちらも毎年10月に香港で行われるサザビーズの美術品のオークションは2013年以降、毎年400~600億円という巨額の売上をわずか5日間であげています。

知人で日本の人間国宝の美術品を海外で販売しようとしている方も、アジアで香港とシンガポールのどちらに本拠を置くのか調査をしてみたら、潜在顧客の数が香港の方が1桁大きいと話していました。シンガポールでも美術品への関心は富裕層の間で徐々には高まっていて、招待制の小規模な販売会の開催数は増えてきていますが、未だサザビーズやクリスティーズなど大手のオークションハウスのイベントの売上では香港の足元にも及びません。

子育てなど普段の生活はシンガポールで行い、非日常の娯楽や文化的なものは香港で味わうというのがアジアで最もグローバルで最上級の生活が送れると感じています。

次回以降は、オーストラリアやニュージーランドというオセアニアの主要都市について、各都市で活躍する大富豪とともに、最新の都市の状況について紹介します。

岡村聡_300

岡村 聡 (おかむら さとし)

シンガポールで資産運用のアドバイスを行う株式会社S&S investments代表取締役。 マッキンゼー&カンパニー、アドバンテッジ・パートナーズなどを経て、2010年11月に妻と2人で同社を設立。現在、資産運用に加えて、海外移住や海外不動産投資などのコンサルティングも行っている。著書に「世界の超富裕層だけがやっているお金の習慣」(KADOKAWA/中経出版)など。

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岡村聡

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