今回訪れたワイナリーは、どちらも年間の生産本数が1万本ほどの小規模の所でしたので、全てのワインがワイヘキ島の中で消費されます。特に、片方のワイナリーは全ての生産工程で化学肥料や一切の添加物を使わないビオワインを作ることにこだわっていて、ワイナリーに併設されたレストランでしか味わえないため、多くの観光客がバスに乗ってテイスティングに訪れていました。
ワイヘキ島は端から端まで車で30分ほどの小さな島ですが、ワインが名物であるためタクシーやバスがかなりの数います。わざわざ、ワイヘキ島まで来て車を運転するためにワインを飲まないという選択肢はありえないとローカルの人も話していました。著名なワイナリーを1日で何件も巡ってテイスティングをするツアーも用意されています。
また、ワイナリーと呼べない規模ですが、個人宅にブドウ畑が併設された物件も数多くありました。肥沃な土地と穏やかで乾燥した気候がワイン用のブドウの栽培にうってつけで、整然と並んで太陽の光を受けるブドウ畑の緑は美しく、島を巡る観光客の目も楽しませてくれます。
この連載では世界各地の都市や場所について、その地にゆかりのある大富豪とともに紹介してきましたが、ワイヘキ島にゆかりのある大富豪としては何といってもスペンサー家があげられます。19世紀後半から製紙業で財を成して、20世紀後半からは不動産業やワイナリーの運営にも乗り出して巨万の富を築いた、ニュージーランド屈指の大富豪ファミリーです。
このスペンサー家は、ワイヘキ島の最大の地主で島の北東部に位置するフックス湾に面した半島を全て個人で所有しています。スペンサー家がワイヘキ島で製造しているワインは、Man O’warというブランドでその品質の高さはニュージーランドだけでなく、広く世界で評価されています。製造本数も年間約30万本で、ワイヘキ島の他のワイナリーを圧倒しています。
ちょうど、私たちが島を訪れていた2016年2月にスペンサー家の当主であったジョン・スペンサーが亡くなり、当地のメディアではそのことが大きく報じられていました。ただ、追悼記事におけるスペンサー氏やその子供たちの評価はあまり芳しいものではありませんでした。