その理由は、スペンサー家がワイヘキ島に所有する土地に、環境破壊が懸念される大邸宅の建設を強引に推し進めているからです。どこも美しいワイヘキ島のビーチの中でも最も美しいとされるオーヒティ湾に面したビーチからほど近いところに建てられる大邸宅は、環境への影響が大きいとして、建築許可を巡って地方政府と裁判で係争中となっています。
元々スペンサー家は、ワイヘキ島やオークランドに所有する邸宅に夏の間 (12~2月)しかおらず、それ以外の季節はファミリーで所有する全長50メートルのスーパーヨットで移動しながらモナコなど主に北半球で生活しています。島国で、自国の文化や自然環境に強い誇りを持っているキウイ(ニュージーランド人)にとっては、スペンサー家のライフスタイルがニュージーランドのコミュニティに溶け込んでいないという不満が強いようです。実際に、ワイヘキ島の現地の方と話しているとスペンサー家へのあまりよくない評判を何度か耳にしました。
ただでさえこうした評判であったところに、ニュージーランドでも最も美しい島の1つとされるワイヘキ島の環境を壊しかねない、大邸宅の建設にローカルの人の多くは強く反発しているようです。スペンサー家は、ワイヘキ島だけでなくオークランドでも高層ビルの建設を推し進めこちらも物議をかもしています。
オークランドの回で紹介したジュリアン・ロバートソンは、自分の死亡記事に「深夜2時に為替のチャートを見ながら死んだ」と書かれたくないのでヘッジファンドの世界を引退したというジョークを飛ばして、ニュージーランドで多くの時間を過ごすことを選びました。それほどニュージーランドはライフスタイルが良く、その中でも最もその特徴が凝縮されているのがワイヘキ島です。スペンサー家が推し進める不動産開発はそのニュージーランドの良さに完全に逆行していて、私自身も全く評価することができません。
スペンサー家のエピソードからは、自然環境の良さに恵まれ、時間の流れもゆったりとしていて、さらに人も穏やかで親切な地に巨万の富をもって生まれたにもかかわらず、その地の本来の良さを理解できずにローカルの人々から反感を買う結果となってしまったという人生の難しさを感じさせられました。
次回は、シドニーの最新の状況について紹介します。