マカオは世界の中でもカジノ売上全体に占めるハイローラーとよばれるVIP顧客の比率が高く、2013年において全体の80%近くがVIP顧客からの売上で占められていたと見られています。このVIP顧客が上記の要因により大きな打撃を受けたことで、マカオのカジノ売上も急失速しました。実際に今回のマカオ訪問でも、宿泊していたMGMやギャラクシー、ベネチアンなどいくつかのカジノフロアを見て回りましたが、熱気は10年前のベネチアンと比較しても落ちているという印象をうけました。
2016年に入ってもカジノの売上減少には歯止めがかからず、1月~4月まで全ての月において前年同月比でカジノ売上は減少していて、平均で前年比12%以上のマイナスとなっています。中国経済の動向を考えるとこの傾向が劇的に反転することは考えづらいでしょう。さらにシンガポールやマニラなど東アジアにおいて、マカオとカジノのVIP顧客を奪い合うことになるグローバルブランドの巨大カジノリゾートが続々と完成しているため、マカオのカジノ売上の低迷はしばらく続くでしょう。
もちろん、各カジノリゾート共にカジノ売上の落ち込みを埋めるべく、多角化戦略を取っています。多角化では先行しているラスベガスと同じ戦略で、高級なショッピングモールを増やすことによるショッピング売上の増加と、シルクドゥソレイユによるショーなどエンターテイメントの増強が柱となっています。
マンダリンオリエンタルホテルの階下に広がるショッピングモールが今のマカオでは最も高級で、グローバルのハイブランドが洗練されたディスプレイの店舗を多数展開していました。しかしながら、休日の夕方でもショッピングモールには人影がまばらで、ショッピング売上の増加によってカジノ売上の落ち込みをカバーするには到底いたっていないようでした。一方、もう1つのショービジネスの増強にはかなりの程度成功していました。マカオのカジノ以外のエンターテイメントビジネスの強化については次回に詳しく紹介します。
前述したようにマカオのカジノの歴史を作ってきたスタンレー・ホー氏ですが、彼が運営するカジノリゾートの旗艦であるグランドリスボアを訪れましたが、規模だけでなく内装のセンスやサービスの多角化などにおいて、外資系のカジノリゾートや同じ中国人によるカジノであるギャラクシーと比較してかなり見劣りました。
この連載は私が実際に訪れたグローバルの諸都市について、その都市を代表する大富豪を絡めながら紹介していますが、マカオについてはスタンレー・ホー氏の生涯とともに、今後のマカオの方向性について次々回のコラムで紹介する予定ですから楽しみにしていてください。