リスボアパレスは総工費約4,300億円の超巨大プロジェクトで、高級ブランドであるヴェルサーチの名前を冠したホテルも開業する予定です。このプロジェクトが成功しなければ、ホー氏が亡くなった後もSJMグループが繁栄していくことは難しいでしょう。
ただ、マカオでは今後も続々と巨大カジノリゾートが開業していきます。米国の大手カジノ運営会社であるウィンは、くしくもSJMと同じ名前であるウィンパレスという総工費4,500億円の巨大カジノリゾートを今年オープンさせる予定です。ラスベガスで最も勢いがあるウィンのリゾートらしく、前回のコラムで指摘したマカオがラスベガスに見劣りする部分を補うかのように、ホテル正面に大きな池を作ってその周りにレストランを配置して街歩きを楽しめるように考えられたプロジェクトです。フェリーターミナルから将来的には鉄道により1駅でホテルと直通するなど立地もよく考えられています。
ラスベガスでもウィンの最大のライバルであるサンズも負けじと、ヴェネツィアをテーマにしたホテル「ベネチアン」が成功したことにあやかったのか、パリをテーマにしたパリジャンマカオを計画しています。また、マカオで最も高級な7つ星ホテルを自称して、世界最高額の1泊10万米ドル(約1,100万円)のスイートを擁した超高級リゾート”The 13”も来年の開業を予定していますし、米国の大手カジノ運営会社MGMも来年マカオに2軒目のホテルを開業させる予定です。
米国だけでなく中国の企業もマカオで巨大カジノリゾートを新設する予定です。2011年に創業したギャラクシーマカオは、SJMグループなど他の中国系の企業が開発したホテルよりも洗練されたデザインで人気となっています。その中国の大手カジノ企業ギャラクシーグループも7,000億円以上の巨費を投じて2018年までにさらに5,000室以上のホテルを開発する予定です。
既にカジノ売上が減少してきているマカオに、ここで紹介しただけでも15,000室もの新規ホテルが開業すれば供給過剰となることは避けられないでしょう。前回のコラムで紹介したいようにカジノ以外のファミリー層やMICE需要をどれだけ取り込めるかがカギになってきます。そして、この世界中のカジノ大手が顔をそろえるマカオのホテル戦争を、マカオのカジノの元祖といえるホー氏の後継者たちが勝ち抜いていけるのか注目しています。