これまで手付かずだったエリアの巨大開発として注目されているのはハドソン・ヤーズです。
ハドソン・ヤーズはマンハッタン島西部の巨大開発で、2012年に建設がスタートして最終的に完成するのは2023年と開発期間は10年以上にわたり、総工費が約200億ドル(約2兆円)にのぼる、米国史上最大の不動産開発とされています。完成すれば30近くの超高層ビルが整備され5,000戸の住宅や約56万㎡のオフィススペース、約7万㎡のリテールスペースに750人の生徒が通える学校まで整備される、街を丸ごと1つ作るといっても過言ではない野心的なプロジェクトです。
ハドソン・ヤーズまでは地下鉄延伸されるため、これが完成すればマンハッタン島の人の動き全体にも影響を与えそうです。また、次世代の都市開発を意識して高いエネルギー効率を目指し、グーグルの都市開発部門として注目されているSide Walk Labの本社が入居するなど、これからの都市開発をリードするプロジェクトとして世界から注目を浴びています。東京にもいくつか大型開発は打ち出されていますが、こうした世界の都市開発をリードする存在は残念ながら見当たりません。
NYでこのような超巨大開発が次々と打ち出される最大の理由は、開発資金をまかなえるだけの資金フローがあるからです。ロンドンでは中東のオイルマネーが、高級不動産の開発資金の中心であると紹介しましたが、NYについてはチャイナマネーの存在感が大きくなっています。NYやLAなどの大都市圏の住宅を中心として、中国人の米国不動産の購入額は2011~15年の5年間で約1,100億ドル(約11兆円)にのぼりました。2015年単年だけでも約290億ドル(約2.9兆円)とこれまで長く米国不動産への海外からの最大投資元であったカナダを抜き、中国が1位となりました。
中国本土の不動産開発には再びバブルの懸念が高まっているため、今後も中国人による米国不動産の取得は拡大すると見られており、2016~20年の5年間では約2,200億ドル(約22兆円)と、これまでの5年間の倍になると予想されています。こうした海外からの投資マネーに加えて、連日主要株式指数が最高値を更新しているなど金融市場が絶好調の米国自体にも潤沢な開発資金があります。
開発資金を海外から頼らざるをえないロンドンに対して、海外の事情に関係なくほとんどの巨大開発を自国で賄えることも、上記のNYの他都市への無関心の背景にあると感じました。
次回は、この好景気にわくNYの高級不動産事情について詳しく紹介します。
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