エンジニアの楽園、グーグル本社ビル
一方、アップルと並んで世界のトップ企業となっているグーグルの本社は写真にあるようにエンジニアの楽園といった印象です。キャンパスには恐竜の骨や宇宙船の模型などがあちこちに飾ってあり、自動運転車が走っているなどとても自由な雰囲気です。こうしたエンジニアが好むガジェットだけでなく、ジムやプールはもちろん、移動式の車両を使った美容院やクリーニングのサービスなど、ほとんどの生活がキャンパスの中で完結するようになっています。
本社の中にあるゲストハウスでは色々な最新機器がいじれますが、今回最も面白かったのは世界中が3Dマッピング化されていて、飛行機のコックピットのようなモニターを見ながら、操縦桿のようなレバーで自由に動かせるようになっている装置です。世界中の空を自由に飛べるような爽快さで興奮した一方、日本の自分が暮らしているタワーマンションも3Dモデル化が完了していて、細部まで見られるようになっていることには驚きました。
人工衛星が小型化して、さらに非常に安くなってきていることで、リアルタイムに複数の衛星でセンシングすることで3Dマップ化を進めているのでしょう。ドローンを自動で制御して飛行させたり、都市開発の効率性を定量化したりすることが可能になって、途轍もないビジネスチャンスがあると容易に想像がつきます。ただ、いくら爆発的に成長した巨大テック企業とはいえ、営利団体が世界中の地図情報で圧倒的に先行することには不安も感じました。
実はグーグルも現在の本社を大幅に拡張する計画があります。グーグルは自動運転車の開発や宇宙事業など従来のビジネスとは無関係であっても技術的にやりがいがあって、かつインパクトの大きいモノであれば躊躇なく取り組むことで知られています。そして、そうしたムーンショット(野心的)なプロジェクトの中でも注目されているのが、サイドウォークラボという子会社が行っている都市運営のスマート化のサービスです。
サイドウォークラボは都市全体の人の動きや天候などあらゆるデータを収集して、公共交通機関の頻度や信号/標識をリアルタイムで変えたり、新たな都市開発に活かしたりすることを考えています。グーグルの本社拡張計画はその実験的位置づけで、ブロック型の建物を多数組み合わせて利用頻度に応じて施設をリアルタイムに撤去したり転用したりして効率化を図ることを考えているようです。また、キャンパス全体を屋根で覆って徒歩や自転車、さらには自動運転車で最適に移動できたり、気温も最適に調整したりすることも目指すようです。
今回アップルの新本社とグーグルの本社を訪れて感じたことは、働く場所から先端的な取り組みの実験場としていて、そこで働く社員にも自由でアクティブな発想を促そうとしていることです。グーグルの本社では、マッキンゼー時代の先輩で今はグーグルのeコマース部門であるグーグルエクスプレスで働いている方と話しました。
彼の話で印象的だったのは、グーグル全体でも重要とされている新プロジェクトであるため、週に1度は創業者とミーティングを持って、そこでのインプットが「(7都市でサービスを展開しようとしている時に)なぜ70都市で一気にできないのか」とか、「商品配送に自動運転車は使えないのか、それよりハイウェイ沿いの高速ベルトコンベアを作るとかもっと効率的なシステムは作れないのか」などの、ハイレベルのインプットが入るというエピソードです。
実験的で先端技術にあふれた広大なキャンパスで、経営陣から創造力の枠を広げてくれるハイレベルのインプットがどんどん入るというこのベイエリアの刺激的な環境こそ、現在の繁栄の礎であると強く感じました。
次回は、ベイエリアの繁栄の源と言える世界で最も勢いがある大学、スタンフォードについて紹介します。
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