イーロン・マスクのさらなる野望
しかし、イーロン・マスクは再生可能エネルギーと宇宙開発に加えて、より社会全体に恩恵がいきわたる新たな技術開発に乗り出しています。それはハイパーループという大規模な輸送設備です。
ハイパーループは高速鉄道を代替することを目指しており、減圧されたチューブの中を車両が浮遊しながら時速1,000km以上で移動するという次世代の超高速移動システムです。こう説明すると現実味が薄いと感じる方も居るかもしれませんが、もうすでに車両やチューブの製造にも着手しています。
ハイパーループは、サンフランシスコとLAを結ぶ高速鉄道に7兆円以上という巨費がかかることに不満を持ったイーロン・マスクが、エンジニアたちと基本コンセプトをまとめたテクノロジーで、コストを10分の1以下に抑えながらより高速に人々が移動できる手段であると発表して、世界から注目を集めました。
最初の実用化路線として、お金持ち産油国であるアラブ首長国連邦のアブダビとドバイの間の160kmをわずか12分で結ぶことを目指して、建設に着手すると2016年11月に発表されました。イーロン・マスクという人類が生んだ21世紀最高のビジョナリーの下に世界から巨額の資金が集まり、世の中が良くなっていくというプロセスはまだまだ続きそうです。
もちろん、サンフランシスコに存在する格差問題は一筋縄では解決できませんが、ハイパーループが米国で普及していけば、高速鉄道網が貧弱でバス以外に移動手段を持たない低所得者も含めて多くの人が恩恵を受けられるでしょう。社会問題がありながらも、それを技術的に解決していくというベイエリアの真骨頂を見た気がしました。
今回で夏の旅行で訪れた欧米の主要都市についての毎週連載は最終回です。来月以降は隔週連載に戻して世界各地についてレポートを続けていく予定です。
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