久しぶりにアジアに舞台を戻して、今回と次回はマレーシアのゲンティン・ハイランドを取り上げます。このゲンティン・ハイランドはマレーシアで唯一のカジノリゾートとして知られています。日本でも安倍首相がトランプ新大統領と会談した直後に、急転直下カジノ法案が2週間で可決したことが色々な憶測を呼びました。日本のカジノの成功を占う上でも、近隣のアジアのカジノリゾートの状況を踏まえておくことは重要でしょうから、2017年最初の取材の地としてゲンティン・ハイランドを選びました。
賭場の雰囲気が漂うカジノフロア
ゲンティン・ハイランドを訪れるのは2011年以来6年ぶりでした。今回滞在したマキシムズはその間に完成した新しいホテルですが、ゲンティン・ハイランド全体の雰囲気はあまり変わっていませんでした。
写真でもある程度の様子がつかみ取れると思いますが、シンガポールのマリーナベイサンズやマカオの最新のホテル群と比較して、シャビーで古びた雰囲気がリゾート全体に漂っています。
ただ、興味深かったのはこの連載でも紹介しましたが、習近平の反腐敗活動によりカジノフロアが閑散としていたマカオと比較して、ゲンティン・ハイランドのカジノフロアは深夜でも熱気に満ちていたことです。印象的だったのが、もう多くのカジノリゾートで撤廃されている喫煙スペースが、ゲンティン・ハイランドでは広めに確保されていて、かつ禁煙のカジノスペースよりもはるかに多くの人でごった返していることです。
ラスベガスやシンガポールを筆頭として、IRと呼ばれる統合型のカジノリゾートが隆盛を極め、カジノ以外のエンターテイメントやショッピング、ゴルフコースなどスポーツ施設を整備して、MICEやファミリー需要を取り込むことがカジノの成功の方程式と言われている中、古い賭場の雰囲気を漂わせているゲンティン・ハイランドは懐かしさを呼び起こしました。
客層はやはり中国系が圧倒的に多くなっていますが、印象的だったのはインドネシア人もちらほらいたことです。イスラム教ではカジノは原則禁じられており、ゲンティン・ハイランドもマレーシア人は入ることができません。ただ、イスラム教徒っぽい服装をしている観光客をカジノフロアで見かけたけど何人かわかるかと、ゲンティン・ハイランドから空港に向かうタクシーの中でドライバーに聞いたところ、最近になってインドネシアからの観光客が増えているという話をしていました。
海外ではその国の慣習に従ってイスラム教で原則禁じられている行為も楽しむ観光客が居ることは知っていましたが、カジノリゾートでイスラム教徒を見かけたことは初めてだったので、とても印象に残りました。
このように観光客のほとんどは純粋にカジノを楽しみに来ているため、ショッピングモールもあるにはありますが、ブランドのラインナップは他のカジノリゾートに大きく見劣りし、ほとんどお客さんも入っていません。写真にもあるようにテナントの空きも多く、正直場末感が漂う場所でした。